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2018年3月31日 (土)

文芸同人誌「いのちの籠」第38号(東京)

 本誌は、詩誌であるが、「散文」という分類で掲載の「強姦許容社会」(堀場清子)などオピニオンが掲載されている。
【「朝鮮国連軍地位協定と最期の砦『九条』」多喜百合子】
 朝鮮国連軍地位協定と憲法九条の関係について、述べられている。要は、朝鮮戦争が休戦協定の中であること、その監視のめに朝鮮国連軍があり、その本部が日本に置かれている。しかもその規約が、参加国の憲法を超越することが可能になっている、という事情を述べている。本評論では、外務省のHPに「朝鮮国連軍地位協定」の掲示が2007年の掲示とあるが、実はその掲示が、平成30年の今年2月13日に更新されている。
 それだけ、政府が朝鮮戦争の休戦協定の行方に関心をもっているということである。これは米国の北朝鮮攻撃の可能性を予兆させるものがある。評者は、この状況と日米安保協定で自衛隊が米軍とともに参戦する可能性を述べ、九条の危機としている。
 この朝鮮戦争時には、日本は米国軍の指揮のもとで日本海の地雷掃海に協力しており、実質的に参戦している。この時期の情勢については、作家・安部公房が活動していた「戦後東京南部文学運動」の記録にもある。
 この事実を前提にすると、朝鮮半島は戦時中の休戦状態であり、北朝鮮にとって日本は敵国なのである。北の日本人拉致問題も、敵国に対する戦術であるということができる。国内に拉致に協力する北のスパイが今も存在する可能性がある。だれが好んでこのようなことをしたがるであろうか? 国家体性という愛国集団化を強制された民族の悲劇であり、それはかつての日本の姿でもあった。そのことを思えば、人間的な悲しみを持ってことに当たらねばならないのだ。日本の公安警察が、拉致を防げなかったひどい無能さは、こうしたなかでの裏事情があるのかも知れない。
 また、日本上空の航空路線が、実質的に米軍の管理下にあるので、羽田空港への発着ルートが、面倒なシステムになっているのであろう。
 さらに、国際的にみると、北朝鮮が核兵器を持ちながら、非核化を唱えている。その論理でいくと、日本は九条を持ちながら、戦争をしても国際的に不思議に思われることはない可能性がある。安倍首相が九条を残して、自衛隊を自衛軍としようとする構想も、その辺にあると推測できるのである。同時に、国連の敵国条項に日本が対象国になっているのに、この朝鮮戦争では、参加国になっているのも、国際条約上の矛盾である。
 そういう問題意識を喚起する良い評論になっている。
発行所=〒143-0016東京都大田区大森北1-23-11、甲田方、「戦争と平和を考える詩の会」。
紹介者=「詩人回廊」北一郎。

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