文芸同人誌「火の鳥」第27号(鹿児島市)
【「三姉妹」本間弘子】
高齢の父親が自転車乗っていて、突然倒れて入院する。成長して家庭をもっている三姉妹が、協力して父親の入院後の生活ぶりを見まもり支援する。父親の病状の観察記であるが、娘ならではの心使いが描かれる。描く範囲が狭くエッセイの世界であろう。
【「のどかな日々」(全五編)鷲頭智賀子】
年老いた母親と暮らす主婦の日常を描く。静かでのどかな時を過ごす。なかにテレビ番組を見ていて、平野レミが出ている話がある。自分は、あるレコード会社のイメージ戦略の小冊子を編集担当をしていた時、平野レミにエッセイ原稿を依頼した。電話をかけると「はーい、平野レミは私でーす」と、いって、執筆を快諾してもらえた。私が20代後半のころだから、それにしても、彼女も相当の年齢であろうと、タレント生活の息の長さを痛感した。彼女の父親も夫も著名人だが、それを知る人も少ないのかも知れない。
【「世界ぶらり文学紀行」杉山武子】
文学者のいた地域を個人旅行する。アトランタ(米国)では、「風共に去りぬ」のマーガレット・ミッチェル。パリ(フランス)では、カフェ「ドゥー・マーゴ」にまつわる話として、ヘミングウエイ、藤田嗣治、サルトル、ヴォーボワール、三島由紀夫などの滞在事実を紹介。ベルリン(ドイツ)では「舞姫」の森鴎外。ワイマール(ドイツ)の「若きウェルテルの悩み」。ストラストフォード・アボン・エイボン(イギリス)でのシェイクスピア。ロンドン(イギリス)での夏目漱石。上海(中国)では、「吶喊」の魯迅。それぞれの地域にちなんだ訪問記と文芸評論との合わせ技だが、どちらにしても、労多い割には、食い足りない。本人が足を運んだという意義がいちばん大きいのであろう。
【「喜びも悲しみも私の財産」北村洋子】
冒頭に主婦が絵画で、地域の賞を取る話がある。しかし、家庭生活に専念するため絵筆を捨ててしまう。それからは、家庭の出来事の叙事に終始する。タイトルにすべてが表現されている。
【「『百鬼夜行』の妖怪と『徒然草』」
鳥山石燕の浮世絵「百鬼夜行」が、吉田兼好の「徒然草」の題材を、妖怪と結びつけて描く、その事情を評論している。調べて疑問を解くのに作者特有の熱が感じられる。
発行者=鹿児島市新栄町19-16-702、上村方。「火の鳥社」
紹介者=「詩人回廊」北一郎。
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