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2018年2月19日 (月)

同人誌評「図書新聞」(2018年2月3日)評者・志村有弘氏

中野雅丈の「岸和田合戦顛末記」(樹林第634号)が、豊臣秀吉に仕えた岸和田城主中村孫平次一氏と紀州勢との戦いを描く。重厚な文体で展開する、読ませる力作。
 牧山雪華の「片恋――岡っ引女房捕物帖」(あるかいど第63号)は、薬種問屋の清兵衛とその浮気相手の女が死んでいた真相を岡っ引橋蔵の女房千鶴が謎解きをしてゆく。捜査コンビの行動が心地好い。
 山下ともの時代小説「貧乏長屋の幽霊」(文芸百舌第2号)は、心温まる掌篇小説。
 三嶋幸子の「遺体ホテル」(八月の群れ第65号)が、今と未来を考えさせられる作品。
 山田英樹の「エンゲルとグレーテル」(大衆文芸第76巻第1号)の主要な登場人物は、小学四年の達樹と五歳の早苗と母の良枝。場面の展開など、よく構想を練った作品。
 牧子嘉丸の「孤影――旅の日の芥川龍之介」(トルソー第2号)は、視点が拡散している印象もあるが、作者の鋭敏な神経を感じさせる佳作。
 「文芸復興」第135号が創刊七十五周年記念号。寄稿文や同誌の歴史を示す一九四三年時の編集後記を掲載し、宮澤建義編集長は七十五年間「自己表出の場を提供し続けている」、堀江朋子代表は戦時下の「文芸復興」同人は「時代に対する抵抗精神と自らの人間性を杖として、生き抜いたのだ」と述べる。「吉村昭研究」が40号を重ねた。主宰者の桑原文明をはじめとして弛まぬ不断の努力に敬意を表したい。
  「babel」が創刊された。同人諸氏のご健筆・ご発展をお祈りしたい。
 「季刊作家」第90号が松本敏彦、「潮流詩派」第251号が原子朗、「綱手」第352号が長崎豊子、「八月の群れ」第65号が竹内和夫、「文芸シャトル」第88号が三宅千代、「別冊關學文藝」第55号が多治川二郎の追悼号。衷心よりご冥福をお祈りしたい。
(相模女子大学名誉教授)
《参照:岸和田の合戦を綴る中野雅丈の歴史小説(「樹林」)――岡っ引夫婦の謎解きを描く牧山雪華の時代小説(「あるかいど」)、現代小説の力作・佳作

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