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2018年2月 8日 (木)

文芸同人誌「婦人文芸」98号(東京都)

【「海に浮かぶ町」秋本喜久子】
 千葉県で東京湾の沿岸に浦安という町がある。東京ディズニーランドが出来るまでは、山本周五郎の「青べか物語」のモデルの町として、周五郎フアンには知られていた。昔は葦原で、漁業と海苔採取業の町であった。この町に住む高校生の悠太の大学受験生活を通して、学友の誠一、彼と付き合っている美佳に悠太は恋心を持っている。
 学校の文化際の催しで、明治からの浦安の歴史を展示する企画があって、その制作活動のなかで、町の資料館を利用して、海苔採り場であった町のことを調べる。
 そのなかで、山本周五郎の「青べか物語」を読み、当時の性風俗のかなり自由な生態を知る。また、漁師だった住民が、東京湾の埋め立てで漁業権の放棄による補償金を得た。あまり大金を手にしたことのない漁民はいかさま師に金をだまし取られたり、身を持ち崩したという話が伝わっている。
 終章では、ディズニーランド周辺の住宅地が、東日本大震災で地面の液状化で、大被害を受けた様子が語られる。
 本編では、浦安という町を舞台に、高校生の活動と、その親たちの生活の変遷が示されている。読んでいて、大変懐かしい感じがした。というのも、自分自身は、大森に住み、海苔の種付けのための網を載せたポンポン船で、父親と共に東京湾を横断。浦安と姉が崎まで渡っていたからだ。
 山本周五郎の足跡をたどる資料など、たくさんあると思うので、別の視点での作品も期待したい。
【「挽歌」野中麻世】
 昭和20年、敗戦末期にハタ町というところにも、米軍の焼夷弾爆撃がされる。そこに伯父さんが住んでいた。敗戦間近い7月9日の夜中、私たちの市はアメリカの爆撃機百八機による空襲を受けた。夜中のたった2時間足らずの無差別焼夷弾攻撃で、市のほとんどが焼け野原となったとある。
 なかに「空襲に遭った人々の証言」(空襲を記録する会発行・1989・3)からの抜粋があり、空襲によって、猛烈な火災が起き、空中6千メートルまで煙が吹きあがり、旋風でドラム缶も人間も舞い上がったという資料記録が記されている。
 身近な伯父の思い出のなかに、当時の悲惨な現状を示している。
発行所=142-0062東京都品川区小山7-15-6、菅原方。婦人文芸の会。
紹介者=「詩人回廊」北一郎。

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