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2018年2月 6日 (火)

文芸同人誌「仙台文学」第91号(仙台市)

【随想「村の名前」(わが逍遥遊②)石川繁】
 NHKのお名前由来番組が良く観られているようだが、ここでは「ふるさと」が、古い都での懐かしさを意味であったのが、地方から江戸に人々があつまり、故郷という意味がついたとか。また、江浦草(ツクモ)が江浦藻(つくも)となったという。もとは葦の種類のフトイという水辺の植物の総称であったという。なかなか勉強になる。
【「雪の雫」渡辺光昭】
 中年男が、若い女を愛人にして付き合いが長くなる。それを妻が感づいているのではないか、と思わせる出来事が起きるのだが、作者は中年男のそれに気がつかない視線で語るので、それがスリル味になっている。愛人との腐れ縁を地道な書き筆遣いで描き、面白く読ませる。ただし、週刊誌の不倫騒動の世相のなかでは、折角の筆力も見栄えがしないで、損をしているかも。菊池寛が科学技術の発達で、ロマンがなくなり、詩は滅びると予言した。現代は小説でロマンをでっちあげる作業をすることが出来ないのか、などを考えさせる。
【「巡礼の娘」安久澤連】
 「一関史」第三巻の民話・伝説のうち、第二十五話「袖が原物語」が原作だということが末尾の資料として挙げられている。普通の生活をしていた女性が、貧しさのゆえに、家から出て、身を売る生活になる。取り残された、その娘も生活のために売春宿で働くようになる。そして巡礼に旅に出て行き倒れになり、村人に自分の身の上を語る。なかなか切実な感じで、引き込まれる話法である。
【「再読楽しからずやーウイリアム・フォークナー②『エミリーの薔薇』」近江静雄】
 自分も中年の頃になって、やっとフォークナーの多くを読み終えた記憶がある。「エミリーの薔薇」は、因習のなかで、女性が自らの愛をつなげていく努力が切なく描かれている。フォークナーがちょっと、ブロンテの「嵐が丘」に霊感を受けたのかも、と思わせる。それがエミリーという女性の名に出ているような気がしたものだ。とにかく、楽しい読み物になっている。
【「松本清張短歌一首の謎(22)―投身自殺予防短歌として」牛島富美二】
 松本清張のミステリーに「ゼロの旗」というものがある。物語に出てくる能登には---

雲たれて / たけれる荒波を / かなしと思へり / 能登の初旅 / 清張

 という句の碑があるそうだ。そこで投身自殺をした女性がいたことから、地元の自殺防止のために頼んだ句だという。その他、面白い逸話が記されている。
発行所=〒981-3102仙台市泉区向陽台4-3-20、牛島方。仙台文学の会。
紹介者=「詩人回廊」北一郎。

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