村上春樹がチャンドラーの7編翻訳完了
作家の村上春樹氏が10年がかりで取り組んできた米作家レイモンド・チャンドラーの長編全7作品の翻訳が完結した。ハードボイルド小説というジャンルを切り開いたチャンドラーは多くの作家に影響を与え、現代文学の古典として世界で読み継がれている。ーーと日本経済新聞が、彼のエッセイを掲載。
ーー 最初に『ロング・グッドバイ』を翻訳出版したのが2007年で、それから10年かけて、自前の小説を書いたり、他の作家の翻訳をしたりする合間に、少しずつ暇をみつけてはチャンドラーの翻訳作業を続けてきたわけだが、そのあいだ「もうやめちゃおうか」と匙(さじ)を投げたくなるようなことは幸いにして一度もなかった。出版社から一度も催促されることなく、自分のペースでこつこつと自主的に翻訳を続けてきた。
どうしてか? チャンドラーの作品に終始一貫して強く惹(ひ)かれていたから……としか言いようがない。そして7作全部を訳し終えた今、あたりを見回してほっとすると同時に、「ああ、これでおしまいか。もうこれ以上訳すべき作品はないのか」と思って、なんだかがっかりしてしまうことになる。チャンドラー・ロス、とでも言えばいいのだろうか。ーー
《参照: 普遍にして固有のヴォイス 村上春樹氏寄稿(上)日経2018/1/3》
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