« 町田文芸交流会の運営の実情を知る | トップページ | 文芸同人誌「海馬」第40号(兵庫県) »

2017年9月17日 (日)

中村文則さん「R帝国」インタビュー(東京新聞)

「朝、目が覚めると戦争が始まっていた」―。物語は、隣国の核兵器発射準備をR帝国が空爆で阻止したニュースで幕を開ける。
 R帝国は″党″と呼ばれる国家党が強権体制を敷いている。民主主義の体裁を取るために存在する野党で議員秘書を務める栗原は、戦争の背後に党の思惑があることを知り、抵抗組織「L」と行動を共にする。
 R帝国には、ヒトラーやスターリンのような独裁者が存在するわけではない。「空気と流れで、いつの間にか全体主義的になってしまう、『日本的な独裁』を描いた」と中村さんは説明する。その風刺が痛烈だ。
 例えば「人権」「真実」など、党にとって都合の悪い言葉は「うさんくさい」「青臭い」「格好悪い」といった負のイメージを植え付けられ、無効化される。党を支援する「ボランティア・サポーター」たちは、指示されなくても党の意向を″忖度(そんたく)″し、反政府的だと判断した人々への過剰な悪口をまき散らす。
 信憑性(しんぴょうせい)の乏しいネット掲示板のうわさに飛び付き、喜々として攻撃を繰り返す男性が吐き捨てるように言う。「事実? そんなものに何の意味がある?」。フェイクニュースがまん延し、国や政権に批判的な言動がネットでたたかれる現状を想起させる描写だ。
 「強い国と一体化したい、という人々の願望が大きくなっている。もはや日本はR帝国になっているのかもしれない」と、中村さんは懸念を隠さない。
 《「2017-09-15 「空気」が支配する島国 / 長編小説『R帝国』 

|

« 町田文芸交流会の運営の実情を知る | トップページ | 文芸同人誌「海馬」第40号(兵庫県) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 町田文芸交流会の運営の実情を知る | トップページ | 文芸同人誌「海馬」第40号(兵庫県) »