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2017年6月18日 (日)

文芸同人誌「異土」第14号(奈良県)

 毎号大変充実した作品群が詰め込まれているが今号も300頁を超える冊子となっている。執筆会員は近畿地方の人が大部分で会合も大阪市の労働センターで行っています。今号は322頁ボリュームです。
 注目したのは秋吉好氏の作品「松永軍記」と松山信慎介氏の作品「甦る火野葦平と戦争文学」である。
 171枚の力作である火野葦平作品論は、戦争協力作家として戦後に追放された事に言及している。
 現在私が同人誌に郷土作家として発表予定の古山高麗雄(1920年- 2002年)の紹介でも重複するので後述したい。
 ここではもう一つの秋吉氏の作品を紹介することにしたい。
 政権基盤の脆弱な室町幕府を揺さぶり戦国時代の幕を開けた応仁の乱の当事者の一人の臣下の物語。
 室町幕府の二大巨頭。細川と山名。日本国の六分の一を所有する六分の一衆と言われ細川勝元。
 そして以後は国元の四国の統治をおこなうそ家老の三好氏が実権を握りのし上がってきた。
 京都の室町幕府を牛耳る三好氏。しかし更にその家老の松永氏が台頭する下剋上の戦国時代。
 その松永久秀の実態に迫る142枚の連載長編が今号では一番の興味をそそられた。
 かつては「歴史読本」等の月刊誌があり図書館で手軽に読めたので歴史ファンとして読んでいた。
 廃刊となり日本史関係雑誌が身近になく、この作品を興味深く学びながら読ませてもらった。
 氏は奈良県在住で当誌の発行人としての重責を果たしながら多くの作品を生み出している。
 徳川家康・豊臣秀吉などの歴史上の有名人は多くの作品になり読者も多い。
 私も新聞連載になった津本陽氏の織田信長記「下天は夢か」は毎日欠かさず読んでいた。
 しかし近畿地方の戦国大名の松永氏についてはあまり興味がなかった。
 「異土」が毎回送付されてくるので読みふけり松永ファンになりそうである。
 武士階級が平将門等で世に出た奈良時代から実力を蓄え平氏と源氏が時代の主役になった平安時代。
 そして源氏の鎌倉幕府。貴族階級の復古勢力による反攻期の南北朝時代後を抑えた足利尊氏。
 その足利幕府を支えた細川氏の家来たちの歴史としてこの作品を細かく読み込んでいる。
源平藤橘の話 源平藤橘とは日本における貴種名族の四つ、源氏・平氏・藤原氏・橘氏を まとめた言い方である
 源平藤橘(日本における貴種名族の四つ、源氏・平氏・藤原氏・橘氏を まとめた言い方)として現在まで日本の名家であり支配階級の根幹として連綿と続く家父長制度。
 日本人とは何か。それを基調にした視点で足利家の歴史の読みを行っている。
 発行所=奈良県生駒市青山台 342-98、秋吉好方、「文学表現と思想の会」(発行日=2017年6月)
紹介者=外狩雅巳・文芸交流会事務局長

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