文芸同人誌「イングルヌック」第3号(大阪市)
猿川西瓜と新城理の二人同人誌で、各人が2作ずつ発表している。本誌は「文学フリマ東京」で入手したもの。二人同人誌だと、その作風と個性が単行本に近く感じられる。文芸的文章道にそった価値観では評価できない雰囲気がある。
【「歯車と綿ほこり」新城理】
レイチェルという若い女性をめぐる一種のキャラクター小説で、彼女の活躍する舞台となる世界が、歯車の構造になっているという特殊性が不明であるのは、シリーズものなのかもしれない。
【「ミドルエイジ」猿川西瓜】
体毛が濃いのか、それともそれが風潮なのか。「俺」は美容室で脱毛に励むが、脱毛をすればするほど、身体の他の部分から毛が生え、濃くなるという現象を細かく書く。まじめに淡々と語るので滑稽感が増す。
【「アドミニストレーション」猿川西瓜】
吉住という男は一般社団法人の団体職員に採用される。課長の澤田さんは、接待での酒宴で、糖尿病になってしまっている。やせてガリガリである。やがて病気が悪化して退職することになる。そのなかで、事務職員の仕事の世界と吉住はどうやってその世界に同調するかを考える。団体の事務員の作業哲学というのが面白い。
【「カスタード色の反抗」新城理】
母親が若くして亡くなり、娘の私が喪主となる。短い中に、叔母や祖母との会話、母親との思い出などを記し、悲しみを奥に置いて現代人の一生態を描くことで、運命への恨みもあるのかも知れない。
発行所=大阪市中央区粉川町2-7-711、猿川西瓜-文学フリマ「イングルヌック」。
紹介者=「詩人回廊」北一郎。
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