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2017年5月22日 (月)

文芸同人誌「孤帆」28号(川崎市)

【「It`s a SEXUAL World‐2‐」塚田遼】
 現代人の性にからむ活動を活写。現代への問題提起になっている。今号では、四(女性 一七歳 高校生)のケース。五(男性 四十一歳 舞台俳優)、六(二十二歳 女性 大学生)など三人の人物を登場させている。質の高い小説的な濃度が充分で、ここでは、性が女性の人間性のスポイルになり、男には虚無的な面を照らすように描かれている。この段階でもかなり厚みをもち、人間存在への問いかけに迫ることを予感させるので、後が楽しみだ。
【「芬香」草野みゆき】庭の水仙の花にかかわる時間と物語が短い中で語られる。詩的要素を含んだことによる完成度は高い。
【「ヒア、ボトム」とおやまりょうこ】
 三人兄妹の長男の晴樹、一番下の妹の優美が会う。両親と結婚30周年と中の弟の友紀の誕生日が同じ月に重なり、ついでに優美の就職内定が出たというニュースが加わって食事をすることになった。その集まりの前に、優美に会おうと誘われ、ドーナツ屋で会う。
 そこで、優美の方から、晴樹の恋人のことを聞いてくる。晴樹は優美が失恋でもしたのかと推測する。非常に個別的な話なので、関心をもつ人はそう多くないと思うが、小さな出来議ごとにこだわる表現力に注目する人もいるかもしれない。
【「腐食」畠山拓】
 アクロバット的な語り口で、自由に思うがままに表現する。おそらくこの手法が体質にあっているのであろう。その作家的エネルギーで、これ何だろうと、読ませる。
発行所=川崎市中原区上平間290-6。
紹介者=「詩人回廊」北 一郎

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