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2017年5月 3日 (水)

文芸時評5月号(産経) 早稲田大学教授・石原千秋氏

 (引用2/3ページ目) 文学界新人賞は、沼田真佑「影裏」に受賞が決まった。松浦理英子の選評は「受賞作『影裏』はきわめて上質なマイノリティ文学である」と、きっぱり言い切ってからはじまる。みごとな評価宣言である。
  「影裏」は、首都圏から岩手は盛岡に移り住んだ今野秋一が、釣り仲間だった日浅との体験を語る小説である。今野自身が「性的マイノリティー」であることがそれとなく語られ、日浅のやや破綻気味な性格と体験、そして東日本大震災の経験も書き込まれる。森の木々や生き物の名前がきちんと書き込まれ、その森の中にこれらの出来事も埋め込まれていく。都会派のお気軽な田舎暮らしとはまったくちがった生活がそこにあることが、これらの名前の数々が雄弁に物語っている。
《参照:公共図書館に未来はあるか 5月号 早稲田大学教授・石原千秋

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