文芸同人誌「石榴」第18号(広島市)
【「特別な体験」木戸博子】
戦後間もなくの小学生時代「私」のいじめの出来事体験と、それに関係した人々のその後の人生を、44年後の同窓会での級友の動向を知る。いじめる側といじめられたと思う側のそれぞれの思い込みがわかってくる。
いじめといっても、現在のそれとは社会的背景と性質が異なるので、ひとつの精神的な状況をフクションで描いたものと思われる。これだけ年月を経たあとでの級友関係の意識は、あまり現実的に受け取れないものがある。しかし、持ち前の文学的に物語を創る力技で、特別な世界の時別な体験として、破綻なく筋を通している。
【石榴俳句館「佳き日よーー気まぐれ旬日記」杉山久子】
俳句や短歌は若い層にも一定の支持を得ており、若者の多い文学作品フリーマーケットでも、このジャンルには人だかりが絶えない。社会の伝達技術が、スマホのチャット化など、変化して短い文になっていることに対応しているのであろう。ここでの俳句はソフトでライト的で、親しみやすい。――風花や塩振ることのあと幾度――句が議論になったそうだ。世代間の文化世界の断絶を思えば、むべなるかな。
【「『開眼の一日』いちご寒―ロバート・P・オーエン」木戸博子】
知らない作品だが、少年時代の事件と行為に意味を、40歳代になって再認識するという構造の話で、その手法は、前記の「特別な体験」と共通してるように思える。良い解説になっている。
【「君のふるさと再び」篠田賢治】
万葉研究の歴史散歩の話。京都の歴史的建造物と当時の人物を若い女性たちに、解説する。ライトノベルに馴染んだ若者にも良い読み物であろう。
発行所=〒739-174広島市安佐北区亀崎2-16-7、「石榴編集室」
紹介者=「詩人回廊」北一郎。
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コメント
すべての作品のご批評、ありがとうございました。
投稿: 木戸博子 | 2017年4月 2日 (日) 05時54分