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2017年2月 2日 (木)

文芸同人誌「いぶり文芸」第47集(室蘭市)

 本誌は胆振芸術祭実行委員会の発行。巻末に胆振管内文芸団体一覧がある。地域は白老町、苫小牧、登別市、むかわ町、安平町、室蘭市などで、短歌、俳句、エッセイの一般文芸の60数グループである。
【「金成マツ略伝(三)」浅野清】
 石川啄木の友人で支援者でもあった金田一京助。彼の北海道の少数民族アイヌの言語研究を手助けしたのが金成マツである。青空文庫に「おば金成マツのこと」(知里真志保)などがある。ここではその時代のさまざまな資料が示されているが、そのなかに大正2年の新聞「北海タイムス」に旭川町近文における旧土人としてアイヌの記事が紹介されている。なかに差別といじめの戦いも含まれている。アイヌ民族は国連でも少数民族に認定されている。研究家には有益な資料であろう。
【「死骨の魔王・赤毛熊―なぜ赤毛と渾名されたのか謎であるー」石塚邦男】
 明治時代に苫小牧が開拓がすすみ、製糸工場ができた。用材に森林を伐採したので、その山地に住む赤毛熊という知恵のある巨熊が、人が備蓄している食材を食い荒らしてしまう。怪我をもせている。熟練の漁師たちが退治のために死骨湖に山狩りにいくが、赤毛熊は戦いの中で、追手を逃れて討たれなかったということだ。死骨湖というのは昔の名前で、いまは支笏湖になっていると小説のなかで説明している。風土にあった作品で、面白く読める。
【「クラック」高岡啓次郎】
 工務店を一人社長で経営する私は、10年前に知り合った家のモルタルのひび割れの修理を頼まれる。知り合いだった女の娘も、10年前に子供だった。今は二人の子持ちになっている。この一家の生活の変化と、離婚歴のある私の現在の結婚生活。家のクラックを修理しながら、二つの家庭のひび割れを見つめさせる。渋い味の短編である。特長的なのが、モルタルのひび割れの修理の仕方などが詳しく書いてあるところ。読み物の短編では、物語の運びに筆を多く費やすので、こうした仕事の具体的手順などは省略せざるを得ないし、知識もない。こうしたところに優れた個性を感じさせる。
発行所=胆振芸術祭実行委員会。発行者=〒050-0072室蘭市高砂5-7-1、三村美代子・室蘭文化連盟会長。編集者=室蘭文芸家協会、井村敦。
紹介者=「詩人回廊」北一郎。

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