文芸時評2月毎日新聞(17年2月22日) 田中和生氏
「現代に通じる三島 肉体と言葉の葛藤=田中和生」
《対象作品》
高橋睦郎評論集『在りし、在らまほしかりし三島由紀夫』(平凡社)/木村紅美の中篇「夢を泳ぐ少年」(『すばる』)/山崎ナオコーラの中篇「父乳の夢」(同前)/、荻野アンナの短篇「ダクト」(『文学界』)/
(一部抜粋)「文学は人生を素材にするのではなく、言葉を素材にしなくてはならないこと。そうした指摘をする背景には、演劇でも言葉でも古典的な教養が失われ、伝統と切れたところで文学作品が書かれていることに対する危機感がある。」
「白眉(はくび)は一昨年行われた講演で、少年愛者である三島は自らの肉体に劣等感があり、表現する者として生き延びるのではなく表現される者としてその肉体を滅ぼすことを選んだと指摘する。言葉が軽んじられる時代を肉体という現実で覆そうとした点で、三島由紀夫は「戦後日本」を象徴する文学者だったと言えるだろうか。
そうした肉体と言葉の葛藤は、現在では女性の書き手たちのものである。」
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