文芸同人誌「日曜作家」第17号(大阪府)
本号は2017年冬号とあるが、もう春になってしまった。読んではいるのだが、紹介手法に変化をさせたいと思うが、どうも思いつかない。
【「どぶねずみ」大原正義】
松尾芭蕉の弟子たちのなかに、路通という乞食生活をする男が入門する。貧しく汚れた俳人の存在そのものが、裕福な流派の生活ぶりの批判となる様子をえがく。俳諧文人の雰囲気を楽しみながら、俳句も味わえる。面白く読めるが、それほど路通の人間性への追求に深みはない。しかし、現代においては、想像力を読者に任せて、大まかな事柄表現の方が、多様な解釈の自由を邪魔しないとも考えられる。読者層の多様化を考えると、悪くない対応かも知れない。作者にその意図があったどうかはわからないのだが…。
【「残り香」(連載十一回)紅月冴子】
長い連載のなかで、いろいろな出来事があって、最終回は節子と博之の恋愛状態で、それが続くことを感じさせるところで終る。恋愛が恋愛に受け取れる書き方。表現力は手堅く正確で、作家的手腕は充分。あとは読者をわくわくさせるテーマや素材に出会うかどうかではないか。
【「華麗なるトマトケチャップⅡ」甲山洋二】
トマトケチャップも熟成して、まったり風味のワインになっている。
【風来流 言いたい放題「腐り切った政治屋どもに渇!小池東京都知事に期待」風来俊】
こちらは都民で、それなりに都政を見ている。都庁の図書館で政策の資料をさがしたり、会見に出る交渉をしたりしている。外部の世情の見解はこうなのだ、という目安にはなる。ただし、行政の運営では、政治家と官僚との関係に問題がある。政治家に思想があっても、官僚には、自分の身分の保持の利害しかない。これは都庁も霞が関も同じで、役人の眼先の無思想の利害関係が、政治家の思想の実現に関わってくるのである。
発行所=〒567-0064大阪府茨木市上野町21号。
紹介者=「詩人回廊」北一郎。
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