« 第155回芥川賞は村田沙耶香さん、直木賞は荻原浩さん | トップページ | 第155回芥川賞に決まった村田沙耶香さんコンビニ勤務 »

2016年7月20日 (水)

文芸同人誌「海馬」39号(芦屋市)

【「玄冬の草」小坂忠弘】
 若き頃の持ち物のなかに、良寛の短歌があったことを冒頭に記し、散文に傾倒していたころ短歌の結社において、
――散文のために詩歌は害なれと避け来し我もや今は歌詠む――というものを詠む。そして、自作短歌を区切りにし、70枚にわたる長編散文詩という形式に挑んでいる。
 菊池寛が「詩は将来なくなる」と論じたことがあった。まさに、現代詩は、絵画の抽象画パターンと具象画、具象イメージ画という分類が出来たのと同じ状況にある。抽象詩は、読者の感受性を頼りにした表現であり、具象詩は行替えをする散文となった。そうした現状のなかで、本編は、詩の方向性をさぐる興味深い試みに読めた。終章には――今私は拙い詩文を閉じようとして何故か「花無心招蝶蝶無心尋花」という良寛の詩を思い出している。それが今の私に遠い風景か近い風景かは自分には分からないけれど。――とある。
 短歌における詩の要素と散文における抒情とを組み合わせたもので、今後の長篇散文詩のひとつの形式の開拓になるのではと、期待したい。
体験をそのまま書いても、生活日誌であり、時には作文になる。文芸風味をつけるためには、やはり散文芸術への創作的自意識が必要である。そういう意味で、本編は含蓄に富んでいる。
発行所=〒659-0053芦屋市浜松町5-15-712、小坂方。海馬文学会事務局。
紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

|

« 第155回芥川賞は村田沙耶香さん、直木賞は荻原浩さん | トップページ | 第155回芥川賞に決まった村田沙耶香さんコンビニ勤務 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 第155回芥川賞は村田沙耶香さん、直木賞は荻原浩さん | トップページ | 第155回芥川賞に決まった村田沙耶香さんコンビニ勤務 »