「北方文学」73号、「さくさく」64号について=外狩雅巳
町田文芸交流会には、続々と同人誌や著作本が届きます。深くは読めず、つまみ食い的な感想になりますがが、概要を一部ですが報告します。
☆「北方文学」73号(発行2016・4・30)=新潟県柏崎市小倉町 13-14 :玄文社
※徳間佳信「私説 中国新時期文学史2」を興味深く読みました。知らなかった文革以後の文学史です。文化大革命の体験的解明作品を列記して中国現代文学の本質に迫る解説は迫力があり読み込ませられます。
また、文学理論の経過説明もあり政治と直結した文学の有り方等に大いに考えさせられました。
越後タイムスに連載された作品の改稿 だそうです。次回以降は85年を境に変化する時期が掲載される。
毎号を待ち遠しく思う「北方文学」は私も感想を載せますが伊藤昭一氏も既刊号を丁寧に紹介しています。
特に70号記念号の紹介記事で【板坂剛「三島由紀夫と『永遠のゼロ』」に読む時代風潮】に惹かれた。
伊藤昭一氏が「永遠のゼロ」の作者である百田百樹を日本民族への憧憬を見抜いた事も感心していた。
71号で早速板坂剛氏の小説「秋の彼方に」を読みそこにある日本民族への迫り方にも読み込まされた。
少年期の回想形式で64年の日本民族精神に迫ろうとする作品で16才の主人公を巡る構成である。
街頭の傷痍軍人に聞く残酷な体験と学友が秘めた兄の殺人。そして明かされる傷痍軍人と妹の異様な現実。
半世紀後の著者が抱く責任者として死ぬ必要がある天皇感。織り込まれた挿話に一貫する日本民族評を見ました。
底流に軍歌の一節を散らすなど、読者を逸らさない文体。暁に祈るという歌から戦後日本批判も聞こえてくる。
※今号の編集後記には同人の追悼文に触れている。高齢化を前にしても同人増加の続く意気盛んさを伝えている。278頁と盛況さは毎回である。22名の同人名簿には東京からの参加者もあり魅力的で有力な雑誌である。
☆「さくさく」64号(発行2016-3-20)= 東京都台東区三筋 1-4-1-703 文学市場代表・坂本良介
332頁の分厚い同人誌。年三回刊。長い交流のある同人会です。小説21編・随筆9編と膨大な作品が詰め込まれている。
3月発行だが4 月17日の合評会報告を同封しての到着である。文学学校で9人による合評で8作を討議している。
新海拓三「本郷油阪追分番屋」は連載だが7頁と短いが江戸情緒たっぷりで会話ですっかりはまり込んだの秀作てある。
掲載作品が多すぎて長く載せられぬ事情もあろうが一挙掲載なら外部評も受けられるもったいない作品である。
かって池袋で仲間を募り同人誌を発行した頃の知り合いが何人も掲載しているので30年前が懐かしく思い出される。
私の相模原市移転に伴い主宰した同人会の半数がこの文学市場に行ったのだ。「相模文芸」にも同人数人が移ってきている。
≪参照:外狩雅巳のひろば≫
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