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2016年5月12日 (木)

著者メッセージ   濱 嘉之さん『ヒトイチ 内部告発』

  一部のスポーツ選手と同じく、警察官は様々な誘惑に取り巻かれている。
  それは警察官が情報を持っているからだ。一般ドライバーがラジオで流れる交通取締り情報を気にかけるように、世の中にはびこる悪は、今警察が何を狙って動いているのか、自分たちについて警察はどこまで知っているのかを知りたがる。彼らにとって情報は死活問題にかかわるため、色目を使って取ろうとする。マスコミもまた警察の動きを逐一知りたがり、あの手この手を使って警察官に近づいてくる。
  警察官になった者は、社会正義の実現という崇高な使命を果たそうと一度は心に誓ったはずである。しかし不祥事が絶えない。不祥事を起こすのは誘惑に負けてしまった者たちなのだ。誘惑に負け、仕事に対する意欲を失った瞬間に組織に背を向けるようになる。組織が嫌なら辞めればいいのだが、辞める勇気も気力もない。辞めても「元警察官」のレッテルがつきまとう。
  誘惑が狙うのは、警察官が持つべき幅広い常識と深い良識を身につける意欲を失った者たちだ。彼らが人生の落伍者になる前に、本人とその家族を救うべく動くのが「ヒトイチ」、監察である。監察は公安のように全方位外交で事案にあたる。組織の内と外を同時に見ながら、一方でプロテクトを掛け他方で誘惑を排除する。これは警察官や警察組織のためだけでなく、警察が国民の信託に応えるために他ならない。  〈濱 嘉之)【講談社ミステリーの館】メールマガジン2016年5月号より。

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