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2016年4月 4日 (月)

著者メッセージ: 加藤元さん 『蛇の道行』

悪って何だろう。
  出発点は、その問いでした。悪という言葉には、どこか甘い香りがするもので、例えば犯罪者や悪党が出てくる映画を観ると、だいたい彼らに肩入れしてしまう。それが作りごとの良さであり面白みで、魅力的な俳優がこちら の共感を呼ぶように演じてくれているから、そうなる。実際、犯罪者の実録などを読むと、ほとんど同情に値しないものです。彼らはたいがい他人の弱みにつけ込んで、まじめに生きる人間を傷つけ、苦しめる。醜い存在です。
 それなのに、その醜さの底の方に、強く心を惹きつけるものがある。
  悪って何だろう。戦中から戦後にかけての時代を生きる、主人公のひとりであるトモ代は、紛れもない「悪」です。犯罪とはいえない、ささいな部分から、徐々に他人を食いものにしていく。トモ代だけではなく、ほかの登場
 人物たちも、それぞれがそれぞれの「悪」を抱え込んで生きています。悪って何だろう。書き終えても、確実な答えは見えないままです。(加藤元)(講談社『BOOK倶楽部メール』 2016年4月1日号より) 

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