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2016年3月 2日 (水)

著者メッセージ: いとうせいこうさん 『我々の恋愛』

  何年も虚構が書けず、都合十六年ほど経った頃、南の島でハタと思いつい たのが「どうせ書けないならいっそ複数の作品を同時に書いて心理的負担を 減らす」という方向で、しかもそれを「ブログの中で自由に締め切りもなく 始める」ことにしたのだった。
  結局百枚くらいまで公開して挫折したままとなったのが今回の『我々の恋愛』で、基本的な構造(二〇〇一年に国際的な恋愛学会の大会が開かれ、“二十世紀を代表する恋愛事例”が表彰されるという仕掛け)は変らない。
  この“恋愛”が間違い電話で始まり、携帯電話のない時代に燃え盛ることは当時から決まっていた。相手に容易にはつながれないからこそ心がとらわれてしまう恋、誤解を含むがゆえにゆっくりとしか進まない愛。そうした
 男女一組の人間関係すべてを、世界中の恋愛学者が取材分析する。
  日本の平凡なカップルがどう深く結ばれるかのユーモラスな大長編は長い時間をかけてようやく出版される。
(いとうせいこう)(講談社『BOOK倶楽部メール』 2016年3月1日号より)

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