著者メッセージ: 栗山圭介さん 『国士舘物語』
装丁を目にするだけで漂ってくる、あの思い。1980年代の国士舘は、泣く子も黙る学校だった。鼻息を荒らげ、体育学部に入学した者たちは、その伝統に押し潰されまいと、もがき、苦しみ、肉体に痛みを刻みながら、永遠に続くと思った一年を経験する。二年生になった彼らは、理不尽なまでに浴び続けた拳を、“伝統”と称して新一年生に与えるのだろうか。三年生となり体罰やシゴキから解放された彼らに、本当の自由は訪れるのだろうか。そして四年……。
国士舘大学体育学部の特別な四年間は、絶対に負けられない戦いの連続だった。いつの日も、小さなプライドを胸に拳を握った。時が経ち、生温くなった時代にあくびをしていたら、あの頃の自分に胸ぐらを掴まれた。「過去に恥じる生き方していないだろうな」と。俺たちはあの時代の延長線上に生きている。青春を過去のものにしたくなければ、そっと拳を握ればいい。握った拳の中には決して失くしてはならないものがあるはずだ。それがある限り男の、おやじたちの青春は終わらない。(栗山圭介)(講談社『BOOK倶楽部メール』 2016年3月15日号より)
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