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2016年2月10日 (水)

【文芸月評】1月(読売新聞)「敗れ去る者」を慰撫・待田晋哉記者

2014年に文芸賞を受賞した李龍徳さん(39)は、2作目となる「報われない人間は永遠に報われない」(文芸春号)を発表した。大学卒業後、クレジットカード会社の深夜のコールセンターで働く若い男が、周囲から変わり者と見られていた契約社員の34歳の女とつきあい始める。
 根拠のない自尊心ばかりが強い男と、母子関係がゆがみ、自己卑下を繰り返す年上の女。人間づき合いが下手な彼らは、自分たちの世界に閉じこもり、自家中毒を起こす。この恋愛小説は、不格好な心を抱える者同士の特殊な展開をたどるようでいながら、二人だけの特別の関係をつくる恋愛そのものが根源的に抱える出口のなさをも映し出していた。
 人生とは、あらゆる「敗北」から逃れられない。多くの夢はかなわず、恋に破れ、大切な人を亡くすこともある。この2作のような敗れ去る者たちを美しく慰撫いぶする作品もまた、一つの小説の形だ。
【文芸月評】「敗れ去る者」を慰撫(1月30日)

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