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2016年2月 3日 (水)

文芸同人誌「海」第二期・第15号(福岡県大宰府市)

 本誌での赤木健介「ある患者の手記(第二回)―癌の一症例」については、ジャーナリズムの観点から《暮らしのノートITO「赤木健介氏の癌治療体験記録」》で評した。 
【「偽手紙」井本元義】
 中学教師だった「私」が昭和天皇の崩御の年に、バーで男と知り合う。その男が、思想家で作家、ジャーナリストで社会運動家でもあった大杉 栄(1885年―(明治18年)~ 1923年―(大正12年)の孫だという。
 そのことから、「私」はかつて、ある文壇バーで大杉栄の弟の孫との出会いがあったことを思い出す。そうしたなかで、大杉栄関連人脈からえた大杉栄の活動ぶりの知るところを記す。そのうちに大杉栄の手紙とされるものを入手する。それは偽物かも知れなかった。
 そして、その手紙の内容を記す。
 いろいろな要素を含んだ小説である。ただ、全体にパリにおける文学や絵画のアーチスト的な雰囲気を感じさせるロマンティックな小説となっている。
 同じ作者の「あちらこちら文学散歩」も同時掲載されている。これは、ランボーの詩人時代と世俗的商人生活のなかの人間の魂に関するものである。いずれも人間精神の芸術的宇宙空間の領域で、作者の精神的青春性に満ちたものある。日常の雑事を忘れさせる味わいがある。
【「落下」有森信二】
 「落下」というテーマで、文芸部仲間が作品を書こうということになる。出だしは読物風で、興味をもたす巧い展開である。それは同時に娯楽小説的に読ませられるということでもある。ところが、話は投身自殺などのイメージを展開させる純文学的な方向に向かう。
 自己存在の不調和感の表現がテーマだと読むと、これまでの作者の作品とつながるものを感じさせる。なかなか難しいところを表現しようとするため、書き方も難しくなっているようだ。
【「罰法転勤」中野薫】
 組織人事の側面から、警察官という職業の特性を描いたもので、大変興味深く面白く読めた。
発行所=福岡県太宰府市観世音寺1-5-33(松本方)
紹介者・「詩人回廊」北一郎

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コメント

申し後れました。赤木の「ある患者の手記 第二回」については、別途紹介をいただいております。併せて、御礼申し上げます。

投稿: arimori | 2016年2月 3日 (水) 23時41分

海第二期第15号の作品3編を御紹介いただき、ありがとうございます。これを励みに、さらにチャレンジをしていきたいと考えております。今後ともよろしくお願い申し上げます。

投稿: arimori | 2016年2月 3日 (水) 23時37分

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