著者メッセージ: 荻原規子さん 『エチュード春一番』
このたび講談社タイガにお招きいただき、新シリーズが出ることになりました。新刊のタイトルは『エチュード春一番 第一曲 小犬のプレリュード』です。
カタカナの多いタイトルながら、中身は八百万(やおよろず)の神が出てくるお話。ただし、神の姿はペット犬のパピヨンなのでした。このギャップに主人公の美綾もとまどうのですが、神様のほうは現代に同調する気まんま
んです。これから下界で人間になって過ごす計画を立てているくらいですか ら。
美綾は、大学に合格したての普通の女の子で、日本の古い伝統には縁のない家庭に育っています。そのため、なぜ自分の元に八百万の神が現れたのかあれこれ怪しみながら、次第に犬との会話に慣れていきます。
私はデビュー作で「古事記」をモチーフにし、和風ファンタジーを書いてきましたが、今回の試みは「神様という存在は人間とかけ離れているゆえに、人間が望むほど人間を理解していない」というスタンスをとってみました。
下界の生命を総体でとらえているであろう神々にとって、人間同士の感情や暗黙のルールは、一番理解しづらいのではないか、と。
パピヨンの名前はモノクロです。白黒毛並みだからです。巻を追うごとにモノクロに可能なものごとが増え、一人と一匹の関係も変化していく予定な ので、そのあたりを読んでいただけると嬉しいです。 (荻原規子)(講談社『BOOK倶楽部メール』 2016年1月15日号より)
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