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2015年12月 4日 (金)

文芸同人誌「駱駝の瘤」通信10―2015秋(福島市)

 本誌は、福島原発事故の地元から発行された同人誌で、そこには現地での環境認識がどのようなものであるかが、鋭く表現されている。その社会性の一面を《暮らしのノートITO―秋沢陽吉「吉本隆明的なるもの」雑誌「駱駝の瘤」通信10(福島)から》で紹介した。ここでは同時掲載された文学的な芸術性にかかわる評論について紹介する。
【「街あるき」再見―訂正と補遺】石井雄二】
 まず、話は前号(通信9)おいて作品「『街あるき』読解仮説』」(磐瀬清雄)があることにつながる。中野重治の戦前に書いた作品「歌のわかれ」と「町あるき」という作品の文章表現の手法について論じたものである。ここでは、映画的な視覚を通じた描写の中に、作者の内面を盛り込むという表現技術に関して、小林秀雄や石川淳などの小説論を交えた長い引用がある。
 同じ号に、石井雄二が「歌のわかれ』最後の一節をどう読むか」を書いているのである。ここでは、木村幸雄の「中野重治と『革新』」(「中野重治論―文学と思想の行方」について触れている。この前作に対応する訂正と補遺なのである。
 作家・中野重治(1902年-1979年)は、政治思想活動と文学芸術の両面を追及した実績があり、社会的な存在としての人間性の表現と、その芸術的な表現力は、すぐれたものがある。作風において細部の描写において、その人間の精神性をよく表現している。流行作家ではないが、現代の文学が、大衆文化のサブカルチャーの一部のなかに埋没する現状からして、純文学の本質に沿うひとつの方向を示すヒントになるのではないか。
発行所=福島市蓬莱町1-9-20、木村方、ゆきのした文庫。
 紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

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コメント

10号もまた丁寧にお読みいただきありがとうございます。執筆同人は喜んでいます。
なお本誌は俳句の雑誌ではなく創作が評論なぞより上との小生の考えが入れられ、川柳が巻頭となった次第。9号は小説も載せました。
今後ともどうぞよろしく。

投稿: 秋沢陽吉 | 2015年12月 8日 (火) 20時34分

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