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2015年11月 9日 (月)

文芸同人誌「群系」第35号(東京)

 本号では、日本文学の特集で「内向の世代」と「戦後の日本映画」がテーマで、各同人が分担して書いているようだ。作家別文学論集のような装いを呈している。小説は1編だけである。
【会長ファイル3「十五万市民の中には」小野友貴枝】
 福祉施設の会長をしていた主人公の英田真希が、市役所の元福祉部長をしていた男と電車のなかで、出会う。全国組織の医療福祉法人に理事をしていた英田真希が、64歳で定年退職。その後、市長の推薦で、地位の福祉センターの会長職にあった時期のことを、出会った元福祉部長との関連で、回想するきっかけになる。
 地域の福祉センターは、市から2人が出向してきており、あとは16人のセンター員が働く。会員と寄付や市の支援が運営資金であるらしい。会長は週2回出勤で、組織の動向を把握しにくいなか、不合理な運営の改善や企業の寄付金を増やすなど、改善をしていくが、市には市の事情があり、改革の余地を残しながら、退任させられるのであるが、少しでも市民の生活に貢献したことを誇りに思うというもの。市役所という地域自治体の曖昧な組織風土がそれとなくにじみ出ている。
【「シャーキャ・ノート~原始仏教残影(8)最終回」古谷恭介】
 現代の仏教事情から、原始仏教の姿を想像しながら、執筆しており、読み応えがあった。私の家は浄土真宗であるが、親鸞聖人の説と連如聖人の布教の過程の矛盾した残像が、檀家寺に存在している。また、自身では座禅修行の金剛経道に参加したことがある。この連載では、現代的に文字化されたものを資料として、原始仏教を分析している。金剛経道の座禅で実感したのは、禅精神もあるが、この時代は文字がなく、すべて口承で伝わったものであろうということだ。リズムカルで、繰り返しが多く、意味の重複など、暗記で伝わったものにもかかわらず、きちんと論理的に一貫している。その不思議さに感銘をうける。
 本稿ではシャーキャの死における説話の多様性が指摘されている。これは、他人からのまた聞きだが、仏陀の論理というものが存在するらしい。論理学哲学者が明らかにしていて、この論理から外れる説は、すべて他の教祖の説だという。例えば、死後の世界についての天国、極楽などのお話は、すべて仏陀の説にはないそうである。
編集部=136-0072江東区大島7-28-1-1336、永野方。「群系の会」
紹介者=「詩人回廊」北一郎。

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