文芸月評11月(読売新聞)文化部・待田晋哉記者
先月は「新潮」「すばる」「文芸」の新人賞と、今回から模様替えした「群像新人評論賞」も発表された。そのうち、文芸賞を受賞した山下紘加ひろかさん(21)の「ドール」に躍動感がある。中学校でいじめられ、家に居場所がなく、ラブドールと暮らす少年。性と暴力の衝動が、漏斗が狭まってゆくように血の色をした一点へ向け収束する。
新潮新人賞の高橋有機子さん(34)の「恐竜たちは夏に祈る」は、社会にうまくなじめない女性が、ほかの家族の犠牲になり、老人介護を押しつけられる題材が現代的だ。すばる文学賞の黒名ひろみさん(47)の「温泉妖精」も介護職の女性が主人公だった。《文芸月評ー20世紀の切ない恋愛》
高齢化の時代。阿部公彦まさひこさん(48)の評論『幼さという戦略』(朝日新聞出版)は、老人と孫などの世代が介護を通して向き合う小説が最近目立つとして、老いた人と幼い人の「弱さの結束」を語る物語の可能性を説く。気になる潮流だ。(文化部 待田晋哉)
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