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2015年10月16日 (金)

著者メッセージ: 竹内明さん 『マルトク 特別協力者』

  今月初め、日本人が中国当局によって身柄拘束されたことが明らかになりました。私は『マルトク 特別協力者』の校了直前、この事件の背景を取材して、手元の原稿と酷似していることに驚愕しました。日中・日朝の諜報戦、脱北者、中朝国境、残留日本人……そして国家の冷酷さ。いまだ拘束されている方がいる本稿の執筆時点で多くは明かせませんが、これらは、日本人拘束事件と拙著の共通のキーワードです。
  私は本来、記者として情報を生業としています。TBSの夕方の報道番組「Nスタニューズアイ」のキャスターをしながら、新刊『マルトク』を執筆しました。前作の『背乗り』に続き、主人公は警視庁公安部を追われた元エ
 ース捜査員・筒見慶太郎。前作では中国諜報機関との死闘を描きましたが、今度の相手は北朝鮮工作員です。
  執筆にあたっては、実際に使われている警察用語などを用いたリアリティーの演出以上に、取材を通じて「生」の公安捜査官の世界を知る者として、彼らの思考、論理、空気感をリアルに描こうと努めました。真実を描くのは
 ノンフィクションだけではない――。すべての真実を明かすことのできない、諜報戦の場合、実はフィクションこそが、生々しい真相を伝えることもあると考えています。私の目標は、取材によって得た現実の諜報戦の一端を、「スパイ小説」という形で明らかにしていくことです。
                             (竹内 明)
(講談社『BOOK倶楽部メール』 2015年10月15日号より) 

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