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2015年10月31日 (土)

文芸同人誌「澪MIO」第6号(横浜市)

 本号の石渡均氏の取材インタビューをもとにした特集「人生の最後を看取る、訪問介護の実態!」は、「暮らしのノートITO」で紹介している。大資本の新聞や雑誌ではあまりやらない視点での、自由なジャーナリズム精神を感じさせる。
【詩「二千十五年のヴォーカリーズ~できればラフマニノフの『ヴォーカリーズ』を聞きながら」田村淳裕】若かりし頃の安保騒動の終焉。1970年代を共に過ごし、海外にわたってから帰国した友人Sへの葬送詩であろう。人は時代のかけらをかかえて去って行く。
【評論・映画監督のペルソナ「川島雄三論Ⅵ最終回」石渡均】
 川島雄三の足跡を追って下北半島まで出かけて、彼の映画製作の精神を追うというか、忖度する余地を作り出していく、という姿勢が独創的に感じられた。その点で、とくに前回と今回は興味深かった。
 川島は山本周五郎原作の「青べか物語」を映画化しているようで、シナリオと小説の一部を引用しているのが、面白く読めた。細部にふれているときりがないが、映画ファンでなくても、それぞれに想いを持たせるものがある。
【評論「ポーの美について(ノート)Ⅴ最終回」柏山隆基】
 「ワーズワースの『序曲』(特色、コールリッジによる評価、政情への幻滅と魂の不滅)、ポーとワーズワースの両者のプラトニズム、ポーの本領、など」とある。いわゆるロマン派の話で、ポーとの関係がどのようなものか学べる。
【「最後の洞窟」柊木菫馬】
 「君」という人称で書かれているので、二人称小説と思わせる。しかし、次第に、交通事故で死者となった「わたし」が、同じ事故で生き残った友人を君をとして語っているのだとわかる。凝った手法である。母親との近親愛の相関関係などを絡めて、お話として成功させているように思える。
 森の木や雑草など植物を風景描写に取り込んでいるのが効果的。3人しか登場しない作品世界でのちょっと変な話に、説得力を持たせている。車谷長吉に傾倒しているそうであるが、たしかに、妙に肌にまとわりついて惹きつける文章運びには、その影響があるのかもしれない。
発行所=〒241-0825横浜市旭区中希望ヶ丘154、石渡方。
紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一

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