エンタメ小説月評10月(読売新聞)「特別」ではない者の覚悟
いくら努力を重ねても手の届かぬものがあると知る一方で、それを易々やすやすと手に入れる才能を持つ他人と出会えば、己の無力さにうつむきたくもなる。《エンタメ小説月評「特別」ではない者の覚悟》
自分には何もない――。宮下奈都『羊と鋼の森』(文芸春秋)の主人公の青年も、そんな思いを抱いていた。北海道の山あいの集落に生まれた外村は、新米のピアノ調律師。17歳まではピアノに触れたこともなかったのに、ある出会いから、この道を選んでいた。
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