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2015年9月25日 (金)

文芸同人誌「日曜作家」11号(茨木市)

 本誌は旧事務所あてに到着したので、前経営者からの連絡で受け取った。読むのが遅くれた。連載中の甲山羊二「優雅なるトマトケチャップ」が、書籍化されたそうだ。文学性と恋心をからめて、特徴のある文体を生み出しているので、文章表現技術に関心が高い人には、一読の価値があるように思う。
【「息長丹生真人長人のこと」大原正義】
 10号に「霊仙山」を書いており、日本から中国に渡り、当地の三蔵法師になった僧、霊仙の心境を描き、同時にそうした僧の誕生した状況を、落ち着いた地味と滋味が融合した筆致で解説する。話には聞いていたが、改めて感銘を受けた。本篇は、その関連の話で、霊仙は「息長丹生真人長人」という一族の出身ではないかと、想わせる話。
 細部に仏教を信仰しているか、学んでいる宗教人の雰囲気が伝わってきて、鎮魂の気持ちを抱かさせられる。同じ作者が作品「母、今どこに 幽明境を異にして」で、亡くなった母親を思慕している。これも、妙に胸を打つ。自分の母は、立派でもなんでもなく、強情で、39度の熱でも入院を拒み、そのまま自宅で亡くなった。自分自身でも、愛していたかどうか、今でもわからない。ただ母と子という立場に縛られていたのだ。そんなことが心に浮かんできた。
【「少女エリナ」中向静】
 留守家庭児童会室での子供たちとの交流を描く。多少の不都合、不合理があっても、子供の自然な気持ちを傷つけまいとする、室長だったが、その人が去り、新しい室長は手際良く仕事をするが、子供気持ちには気をまわすことができない。傷つきやすい子供たちとのやりとりと生態を、活き活きと表現する。大人になるということは、心に鎧が出来て、心が傷つかないようになってしまうことなのかも知れないと思った。
発行所=〒大阪府茨木市上野町21番9号、大原片。
紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

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