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2015年8月31日 (月)

町田文芸交流会8月30日例会報告=外狩雅巳

  秋雨前線が停滞する小雨続きの30日(日)の午後に文芸交流会を行いました。
  町田中央公民館の一室に男女4人の計8名で3作品の合評等で3時間討議をしました。
 「ロゼッタ」「みなせ」「風恋洞」の3名の作品感想と各会の紹介や紙誌説明等です。
 「相模文芸】」「民主文学会・町田支部」「文芸同志会」も参加し熱心に討論しました。
 二人だけで同人誌を発行した「秦野文学同人会」や手作り詩誌の「ロゼッタ」の内情。
  更には年間に4回も同人誌を発行する精力的な「みなせ文芸の会」もあります。
 作品感想の交流だけでなく各会の運営や同人誌作りの手法等も質疑応答をしました。
 新発行の「文芸多摩通信11号」も配布され「ロゼッタ」も追加配布されました。
 多摩通信に大川口支部長による文芸交流会についての紹介文がありますので記載します。
―――町田市の近郊で活躍している文学グループからの積極的な呼びかけもあり「文芸交流会」の名で民主文学会と連携する動きがすでに半年を超えて続いています。異なった文学グループがそれぞれ作品を提出しその合評を通して交流をふかめるというユニークな方向は、今までにない文学交流の場として期待しています。――
 関東に文芸同人会は数十あると言われていますが地域一帯での交流はありません。
 以前、文芸思潮誌の五十嵐編集長が呼びかけ開催された関東文芸交流会がありました。
 しかし、現在は活動休止状態です。その多摩地区版となればと月例会を継続中です。
 同人誌以外も単行本やパンフ的な個人作品も活字なら取り上げて合評します。
 友人達の文芸談義的な集まりの発展継承として既に二年間の歴史を作りました。
 文芸同志会の伊藤昭一氏の深い作品評・広い文学情報も大いに役立っています。
 同人会の仲間内に纏ってしまう傾向のある市民文学の壁を破る試み中です。
 今後も月例会開催の情報を掲載してゆきます。是非、各地で興して下さい。
《参照:外狩雅巳のひろば


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2015年8月27日 (木)

文芸同人誌「あるかいど」56号(大阪市)

【旅行記「2015ワルシャワの心臓」木村誠子】
 作曲家ショパンが好きで、ポーランドに行った話。結局、ドイツ人によるアウシュビッツ、ロシアからの侵略など、隣国の軍事力に翻弄される小国の運命の歴史を再確認する旅となったようだ。ショパンがパリで生活し故国に住むことがなかったというのは、そうかと、考えさせられた。
【「夏(オムニバス)高畠寛」
 「五月 満員列島」は、日本が夜になると海底に沈み、朝になると浮上するという設定で、俯瞰した日本人生活論を、乾いた視線で描く。じんわりとした文章で、クールジャパン的な日本自慢的世相を皮肉っている。テレビのバラエティなど、コンプレックスを意識した「日本の恥の文化」はどこに行ったのか。自慢文化の裏返しだったのかと思わせるほど。共感し面白く読んだ。「六月 水入らず」息子を失った夫婦の生活を活写しながら、しんみりとさせる。筆致の感覚に鋭さが見えて、文学的に優れている。「七月 夏の朝の事」亡き父親の登場の仕方が、自然で異界と現実の融合させる表現に優れていて、どれも面白い。オムニバスだが、全体を通して、作者の自由な精神がよく活動していて、雰囲気が一貫している。
【「桜&桃 イン・ジャパン」細見牧代】
 カナダへの移住権をすぐもらえると思っていたら、それが手続上、延期になって、とりあえず亭主を置いて、赤ん坊ともに帰国する。そんなこともあるのかと、面白く読んだ。人さまの生活事情を知ることは面白いものである。
【「ゼロの視界」山田泰成】
 かつて信用金庫の支店長をしていた父親が、退職後に認知症になる。息子の「私」は、銀行員をしている。銀行の仕事や預金者とのトラブルの様子が細かく描かれていて、興味深い。認知症の父親は、脳血栓で意識不明になり、入院となる。兄弟はいるが、どこも余裕がない。「私」父親の介添えと仕事の両方をする。疲労困憊する。この出口の感じられない状況を「ゼロの視界」としたのであろう。
 父親は先の見込みのない患者専用の病院に移り、亡くなる。銀行のトラブルを解決した「私」は支店長になる。ある程度経済的に余裕がある家庭のケースであるが、それでも、一つの介護の形として、参考になる。
【「片雲の風に誘われて」泉ふみお】
 団塊の世代の解説から、はじまる。定年退職までに、どのようなことを経験しているか、過去を伴った現在という設定で、面白く読みやすい。漠然とした題名にふさわしく、さしたることがないのだが、そこはかとない哀愁を感じさせる。
【「同じ月」善積健司】
 松江で、兄の恭が芥川龍之介と親しかったことから、弟らしい人の視点で龍之介の学生生活を描く。それなりに面白いが、文学的才能のあったらしい恭を描くのか、松江での芥川のことを書いたのか、歴史的資料から脱皮しきれていない感じ。
 他の作品も呼んだが、全部紹介していたら、ただでさえそうなのに、何をしているかわからなくなる。
発行所=〒545-0042大阪市阿倍野区丸山通2-4-10-203、高畠方。
紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

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2015年8月24日 (月)

同人誌季評「季刊文科」66号・谷村順一氏

 「小説」と「生きる」こと
≪対象作品≫
「闇市のルパン」緑川すゞ子(「九州文学」第29号(福岡市)=本誌66号に転載/「片道切符」瀬戸みゆう(「半月」第4号(山口県)/久方あきこ「ただそこに立っているということ」(「P.be」No.2(愛知県)/筧譲子「赤いスリッパ」(「じゅん文学」第83号(名古屋市)/秋月ひろこ「少女は幻影を見ていた」(「小説家」第124号(千葉県)/渡邊久美子「丸商講演会」(「あらら」6号(三豊市)/同「クレッツェンド――昭和の青春物語」(同)/茨田昂太「同人誌の誘惑」(「新現実」通巻123号(東京都)/小川悦子「杏花村」第8回(同)。

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2015年8月23日 (日)

「みなせ文芸」合評会・懇親会を見学=外狩雅巳

 「みなせ文芸」67号の合評会が8月22日に行われました。
 場所は小田急線・渋沢駅より五分のスナック「トラジ」です。
 午後二時に開店したほの暗いフロアに六名の会員が集合しました。
 伊豆から来た熱心な男性など男女各三名で合評会が始まりました。
 全員が作品評を書き持参し配布すると言う熱心さのある会です。
 各地の執筆者9人のうち6人の参加もこの日の会合を盛り上げています。寿司をつまみ飲酒しながらのひと時も和やかです。
 「みなせ」は年四回の発行です。今号も160頁あり、会員の執筆意欲が高く、親和感も良くうらやましい同人会です。
 作品は調査研究文や紀行文が多く、完成までの苦労もわかり会員達の同人誌へ寄せるも語られました。そして、その寄稿の編集・発行や会合設定などを取り仕切る事務局の岡森氏の手腕も見事です。
 討議に参加し製本上の意見を述べたら早速取り上げてくれました。
 見栄えの工夫が外部評に反映する事もあります。Ⅰページ三百円という格安の掲載料が絡んで居るので今後の課題でしょう。
 三時間の長丁場の合評会が終わるとその場はカラオケ会場になります、語って歌って夜まで楽しむ楽しい同人会です。《参照:外狩雅巳のひろば


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2015年8月20日 (木)

文芸同人誌「みなせ」67号(秦野市)

 私が作品を読んで満足するには二つの要件がある。一つはロマンを感じ心を動かした時。もう一つは言葉に感じて心が豊かになった時だ。みなせ文芸の会が8月1日発行の「みなせ」67号には、そのどちらもがあり、豊かに満たされたひと時を持った。
【随筆「外浦」みずき啓】
 抒情たっぷりの叙事詩として言葉の感性に揺り動かされながら、二度続けて読み込んだ。半世紀も前の青春時代に陸地の端っこを訪ねた能登半島の旅を思い入れたっぷりに書くその文章に引き込まれた。―「外浦」は、行きずりの町である。―と最初と最後に書き、中に老婦人の民宿での一泊記を入れている。-ぽくぽく歩き出したのは、それは、そうなのだが。――等と書かれると私はすっと情景の中に入り込んでしまう。
【随筆「新説 記・記神話」小柏正弘】
  歴史のロマンに共感し読み進めた。二・三世紀の古代日本史の謎に挑み資料を披露する。日本人・日本国はどこから来たか?多くの研究があるが今だに謎が多い。著者の今後に大いに期待したい。
 発行所=〒257-0013秦野市南が丘5-3-16、 岡森方。
 紹介者=「詩人回廊」外狩雅巳


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2015年8月18日 (火)

文芸誌「法政文芸」第11号(東京)

 法政大学の国文学科の別冊である。読みどころは「暮らしのノートITO」で紹介した。文芸コースから大学院の文芸創作プログラムに進んだ修了生・くぼ田あずさ氏が、第9回小説宝石新人賞を受賞したという。基礎的な文章表現力では、洗練されていて当然だが、娯楽物系への対応性も見せるというのは興味深い。
【「マリアへ捧ぐ眼」飯村桃子】
 主人公の学生「私」は、モスクワに短期留学する。現地での教会のマリア像の詳細なイメージと、生々しい存在感と美。「私」は、宗教に詳しくない、とあるのでクリスチャンではない。そこで見たキリストか、とも想わせる汚れにまみれた男との出会い。この観察的な表現と、心象イメージの拡張は何なのか。孤独と不安の実存的なイメージが感じられる。そして、帰国すると認知症になってしまった祖母。きめ細かい感覚の表現力は読ませる。具体的な生活上の細部でてくるが、それで「私」の実存的な存在感が高まるかというと、そうでもない。存在の危うさや孤独への内面的追及性が軽くなっているような気がする。
 とはいえ、人間の実存的な存在感の表現にせまろうとした作品に読めた。ちょっと、形でいえばリルケの「マルテの手記」を感じさせるところも。
【「群青の石」北吉良多】
 東武東上線の沿線の埼玉のどこかに家族と共に住み、東京の大学に通い、池袋にあるのかどうかはっきりしないが、中学生塾の講師をする主人公。就職活動は、うまくいかず、すこし焦りがないでもない。恋人がいてお泊りなどもするが、彼女と結婚することは考えていない。
 塾の生徒に、周囲から浮いて孤独な女子中学性の井崎がいる。ほかの講師仲間は、扱い難いと彼女を敬遠するが、主人公は内向的な彼女を気にはするが、それほど苦に思わない。
 井崎はその孤独な生活から、学校ではいじめを受けているらしい。そこで、東京に出ると言いだす。環境の変化への挑戦である。なんとなく生活し、就活をする主人公の自分自身への不満、未来への不安とそれが重なる。
 主人公は「心理学」を学んでいるが、現代の大学生性のなかで、自宅通学型の典型的学生生活状況がなかなか面白い。「心理学」では、職業選択での志望企業に茫漠としたものがあるのであろう。その茫漠さに主人公は不満をもって変わりたいと思う。「僕は真面目に生きたかった。狂った歯車を正すことはそんなに簡単ではない」と思う。就職すれば、日本的ビジネスカルチャーの社会的役割演技に適応するために奔走するのであろうが、大学生活のモラトリアム性への違和感への表現と読めた。
発行所=法政大学国文会。発行人・勝又浩、編集人・藤村耕治。
紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

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2015年8月16日 (日)

著者メッセージ: 西尾維新さん 『掟上今日子の挑戦状』

 西尾維新です。忘却探偵シリーズ第三弾、『掟上今日子の挑戦状』が発売の運びとなりましたので、ご挨拶に伺いました。
 最速の探偵らしい速度でのシリーズ展開ですね。8月からのコミカライズや10月からの連続ドラマ化と、一緒にお楽しみいただければ。
 そして『副物語 アニメ偽物語・猫物語副音声副読本』も、上下巻で出版されます(上巻8月発売・下巻9月発売)。
 あの副音声の、脚本をまとめたものです。物語シリーズも10月から、『終物語』のアニメ化が始まりますので、
 何卒よろしくお願いします。(講談社『BOOK倶楽部メール』 2015年8月15日号より)

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2015年8月14日 (金)

酷暑中で気力が衰退の記

 このところの暑さには、参り候。事務所を退去したことで、雑事がつづいたが、とにかく無事にすます。趣味の文芸に本格的に取り組もうと、まず同人誌「みなせ」に北一郎名で評論投稿。これは、「外狩雅巳の手記」の解説文。いわゆる戦後70年の庶民の生活史として読むと、資本主義社会の基本的な姿が浮かんでくる。これを良い資本主義として標準にすると、現在の資本主義が劣化して、社会を悪くするであろうという予測を前提にしたもの。
 人間社会は常に変化をするということは、現実である。しかし、実生活上は変化しないということを前提にしている。そのことの矛盾を自分で再認識するために書いたともいえるので、読者のことはほとんど考えないでいる。
 昨年、中学時代の同級生の市民画家と話をしたが、描いた絵を人に見せるのが熱心でない。こうして書いたならば、どうなるかを自分で確かめるところに意味があるらしい。それに似ている。
 ところで、8月の敗戦に関する番組をかなりたくさん見て、涙ぐむことがしばしば。とくに、原爆で両親を亡くし、一人になり、共に生き残った友人ががんでなくなった。女性は原爆病で結婚もせず、一人生きる。人間は神を必要としているとしみじみと思った。自己の存在は「無我」という思いを強くする。
 それにしても、どれだけ反省しても、戦争はなくならない。まるで正気でなかったように回顧するが、そんことはない。正気でまた戦争をするのである。どれほど戦争はしたくないと、みんなが思っても、戦争はするのである。この人間精神の構造に触れた番組を目にしなかった。わかっていてもやめられない、という人間の精神構造はじつに簡単である。いうまでもないから、言わないのか。

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2015年8月13日 (木)

文芸誌「中部ペン」22号(名古屋市)

 中部ペンクラブのイベントについては「暮らしのノートITO・中部ペンクラブ9月30日に公開シンポジウム」に記した。
【「断たれた物語」竹中忍】
 俊一という27歳の青年が、入院中の祖父の見舞いをする。そこで、祖父から祖父の兄、国彦の日本の軍部独裁政権における基本的人権擁護派の男の孤独な戦いを語る。
 国彦は、昭和12年ころから始まった軍部独裁政権に反発し左翼運動に奔る。そのために愛する恋人しずえとの関係をも犠牲にする。そして、官憲の手で拷問、虐殺され、それを隠蔽するために検察が遺体を始末し、遺骨だけを家族に渡す。
 話は俊一が祖父や、国彦の恋人しずえからの聞き書きというスタイルで、大変読みやすい。作者の現代政情における危機感を、過去に重ねて伝えようとする意欲と、伝聞手法での制作の工夫がが感じられる。
【「蔵の中」本興寺更】
 本作は、第28回中部ペンクラブ賞受賞作。選者評が掲載されている。貸本屋に入り浸る次男坊の主人公や、隠居した父親が、長男に不景気による財政の悪化から、趣味につぎ込む金の節約を要請される話。江戸時代の武士のサラーリーマン的側面を描き、まったく、現代人の感覚を見ごとに作品中に投入している。変わった時代小説だが、平和で安心して暮らせる現代の平和意識の浸透を示す作品として、女性だからこそ書けるもの。記録すべき価値があると思われた。
 その他、公開鼎談「同人雑誌の光と影」は、伊藤氏貴、清水良典、清水信、各氏の文芸商業誌と同人雑誌の関係について、意見が交わされている。また、作家・吉村萬壱氏の講演「小説を書くという在り方」を遠藤昭巳氏が書き起こしている。どれも文芸表現の多様化した現状からの事情がわかる。
紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

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2015年8月11日 (火)

「風恋洞」43号(秦野市)について=外狩雅巳

  神奈川県秦野市の秦野文学同人会の「風恋洞」43号】は、二人の同人で84頁の文芸同人誌を八月一日付で完成させた。
  収録されている規約によると1980年に会費・名称・発行等々の細部が決定されている。以後年一回以上の発行を今日まで続けて居る事に成る。現在は二人になった会員は、小野友貴枝代表の強力な意志で作品を掲載し発行を持続している事がわかる。 その意志と意欲は作品「ハッピー」にも表れている。
【「ハッピー」小野友貴枝】
 悦子と美代の高齢姉妹の物語である。73才の姉、美代が独居する高円寺を訪ねる四歳年下の悦子の視点で描かれている。
 痴呆症が進行する美代の生活は年下の山崎が支えている。山崎にプロポーズされたから交際中だと強がる美代の可愛さが素直に読めて好感度のある作品になっている。
 夫との日常も空虚な悦子は、美代の生き方を豊かな老後生活だと満足気に描写する事でこの作品を深めている。
 小野氏はシナリオとエッセイも掲載して少人数の同人誌を盛り上げていて奮闘ぶりを頼もしく読ませてもらった。
 かっては盛んに活動した文芸同人会も高齢化は大きな問題で、解散した組織も多い。意欲的に作品を書き身銭を切って発行する事の困難さは当事者でなければわからないだろう。
  編集後記には75才になる自分の書き続けた日記の処分での困難な事例を挙げ乍らそれでも書く執念をにじませている。
【小説「学徒動員異聞」府川昭男】
 もう一人の同人は85才である。学徒動員の記憶を小説に仕立て20枚以上も掲載して同人誌としての体裁を支えている。
 身銭を切ると一言でいうが毎号数十万円もかかるのである。
 私の所属する【相模文芸倶楽部】は三十余名もの会員なので年二回刊行の同人誌に合計百万円近い出費を支えられるのだ。
 文芸同人会で発行された同人雑誌は会員や知人に配布する他には使い道も無い。数部は新聞社等の同人雑誌評係にも送付し作品評を期待するが全国からの多数中で僅か数誌が選ばれる。
 文芸同人会は数百もあるが他誌について興味を持つ処はすくない。仲間内での合評会を開きそこでの評価が全てである。
 その事に着目し近隣同人会での交流を企画している。他誌の作品を読みあい感想を交わす。これで各同人会の数倍の読者を得られ深く読まれ作品を巡る討論も行われる。
参照《外狩雅巳のひろば


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2015年8月 9日 (日)

『GRANTA JAPAN with 早稲田文学』が40歳以下の新人発掘へ

  国際文芸誌『GRANTA JAPAN with 早稲田文学』(早川書房発売)を共同編集する早稲田文学編集室がユニークな若手発掘プロジェクトに乗り出す。プロ・アマを問わずに短編小説を広く募り、最優秀作品は来年3月刊の同誌第3号で予定している特集「ベスト・オブ・ヤング ジャパニーズ ノベリスト」で紹介し英訳もするという試み。欧州やアジアなど10カ国超に広がる同誌の国際網を通じて、無名の書き手がいきなり世界デビューを飾る可能性もある。
 第3号での特集は、同誌が提携する英の文芸誌『GRANTA』で1983年から続く看板企画の日本版。英国版ではこれまでカズオ・イシグロさんやイアン・マキューアンさんら後の世界的作家を選出し、若手作家の登竜門と位置づけられている。それを参考に、日本語で小説を発表している「40歳以下の注目すべき作家10人」を独自に選ぶことにした
無名の書き手…いきなり世界デビュー?! 「GRANTA JAPAN」(産経ニュース)

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2015年8月 4日 (火)

文芸月評」8月(読売新聞8月4日)文化部 待田晋哉記者)

NHK玄関ロビー。金属製の容器から男が、床にどろりとした液体を流す。次の瞬間、オレンジ色の熱風が辺りを包んだ――。村上龍さん(63)の『オールド・テロリスト』(文芸春秋)は、冒頭から衝撃的だ。東日本大震災から7年後、閉塞感が深まる社会で謎のテロリストが暗躍する。

 次第に社会に必要とされないことを不満に思う老人たちの存在、日本を戦後の「焼け野原」に戻し、原色の生の充足感を再び味わいたいという彼らの欲望が浮かび上がる。

 テロの取材者が、学校から脱出する中学生らを描く『希望の国のエクソダス』(2000年)に登場する男性であるのも興味深い。この間、少子高齢化と格差拡大の固定化は一層進んだようだ。その中で、何が現代人の怒りや希望を感じさせるようになったのか作家は視線を注いでいる。

 島田雅彦さん(54)は、連載「虚人の星」(群像昨年7月号~)を終えた。中国が台頭する国際社会で進むべき方向に迷う日本の政治を、多重人格者に例えたような小説だ。現代日本の状況を深く踏まえて執筆された村上、島田さんらの作品には、奇くしくも心の病のモチーフが共通して出てくる。人間の能力や存在価値が貨幣に置き換えて測られ、各人の精神を蝕むしばんでゆく時代の一面を映すかのようだ。
《【文芸月評】一作ごとに深まる人生》

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2015年8月 3日 (月)

文芸時評7月(東京新聞7月30日)佐々木敦氏

村田沙耶香「消滅世界」=問題作らいし問題作
綿矢りさ「ウォーク」=なぜこれを書いたか
≪対象作品≫第153回芥川賞・「羽田圭介「スクラップ・アンド・ビルド」(「文学界」3月号)/同・又吉直樹「火花」(「文学界」2月号)/村田沙耶香「消滅世界」(「文藝」秋号)/綿谷りさ「ウォーク・イン・クローゼット」(「群像」8月号)/原田宗典「メメント・モリ」(「新潮」8月号)。

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2015年8月 2日 (日)

著者メッセージ: 乱歩賞 呉勝浩さん 『道徳の時間』

 『道徳の時間』で第61回江戸川乱歩賞を受賞した呉勝浩と申します。
  受賞作は昨年5月、前回の乱歩賞最終選考で「落ちたよ」というお電話をいただいた日から猛烈な焦燥に駆られて書き始め、7月に初稿が出来上がりました。応募までに4回くらい大幅な改稿をし、受賞を知らされ「やった!
」 と思う間もなく、今度は直しの作業が始まりました。いったん完成した作品 にここまで時間をかけて取り組んだことはありませんでした。
  本作を読み返すと、なるほどこれは私のデビュー作だな、と思わずにいられません。稚拙な部分もそうですが、何より世の中に自分の居場所を手に入れたいという熱が、登場人物のあり方に投影されていて気恥ずかしいほどです。
  たくさんのご意見をいただき、改稿に努めましたが、『犯行の動機』については初稿時点から変えていません。これは私にとってリアルだからです。 ぜひ、ご自身の目で確かめていただければと思います。 (呉勝浩)
(講談社『BOOK倶楽部メール』 2015年8月1日号)

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2015年8月 1日 (土)

町田文芸交流会の七月例会を実施=外狩雅巳

町田文芸交流会は7月30日に七月例会を行いました。
近郊の五つの同人会等で二年間に渡り続けられています。
今回は「みなせ文芸」67号が発行され配布致しました。
更に町田で詩集等を発行する女性も二人が見学に来ました。
参加者八人で相模文芸会員の随筆を合評しました。
次回は「ポエム・ロゼッタ」の11号の詩作品を予定しています。
この町田の文芸グループは「我兆ポルカ」といいます。
文芸同志会宛に11号が届きましたので例会に誘いました。
武田さんと津田さんの女性二名が見学に来てくれました。
会合参加後、次回の合評作品に応じてくれました。
交流会で作品を読み合評する事に各会が期待しています。
その為に交流会仲間へ配布する同人誌が不足気味です。
前回も作品をコピーして補いました。発行部数増加になりそうです。
今後も次々に見学者等が増える事が想定されます。
近郊の文芸愛好家や文芸同人会へも案内を強化します。
同人会内部だけの内輪の読者だけでなく外部に読まれてきました。
交流会が周知されるに連れて各同人会も活性化する事でしょう。
《参照:外狩雅巳のひろば


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