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2015年5月 9日 (土)

「まほろば賞」推薦候補「新幹線の手紙」「地の来歴」紹介(投稿)

 外狩雅巳です。5月10日の「関東同人雑誌交流会合」で行われる「まほろば賞」関東候補の作品紹介を致します。候補は五作品です。既に雑誌「相模文芸」掲載作品は《外狩雅巳のひろば》で紹介済みです。二回に分けて掲載いたします。
 ☆佐々木欽三作【新幹線の手紙】(街道25号)掲載=優雅な退職高齢者の楽しくスリリングな体験のような感想の後で少し読み込みました。会話で進める文章は読みやすいが他人事のような出来過ぎた話の印象がある。
佐々木は友人の建設会社の顧問として余裕の老後である。年数回の通勤時の体験談。
 新幹線の座席で拾った筧えりの手紙からその友人の矢代萌との三人での交際談です。高齢女性からの交際申込み手紙には仕掛けがあるがそれでも楽しい事の連続です。高木は懸賞小説当選歴でゴーストライターも手掛けて来た書き手という設定です。で、二人の女性の自伝出版も依頼されたりと出来過ぎの筋書きが読みやすく進
む。裏も有りそうな予感のラストも楽しい事が起きそうだと結ぶ老人の幸福感で終わる。こういう人生もありかという感想でした。作者の幸福感が続く事を祈ります。
 ☆嶋津治夫作【地の来歴】(全作家97号)掲載=昭和四十年代関東平野での稲作の生産対策に関わった若き農林技師の回顧。と言う簡潔明瞭な該当号の編集後記があるので先ず引用させてもらいました。島村真一が佐原の県・総合地方事務所農林課勤務時代の一年間の記録です。香取郡等の地域農業の病害虫防除の業務実情報告が具体的に記述されている。
 上司の伊藤係長とのコンビで現場に入り農家との交流談を色々紹介している。地方農業行政の内情を詳しく専門的に紹介する誠実な時代報告書とも読めた。成田空港建設反対運動の初期も書き込まれ真面目な姿勢で農民を書いている。一年経過した春に伊藤係長の転勤話で締める島村青年の成長談として読んだ。
 ドラマ性よりも地域農民と農業政策の実情報告を重視した作品でもある。この地味な作品が候補になった事に興味を持った。


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コメント

今年のまほろば賞候補に「相模文芸」の岡田さんの「強奪者」が選ばれたとか。
まほろば賞候補はどのようにして選ばれるのですか。
教えてください。       相模文芸同人   木下

投稿: 木下隆 | 2015年5月 9日 (土) 14時51分

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