同人雑誌評「図書新聞」(15年04月11日)志村有弘氏
評者◆志村有弘=豊かな構想の時代小説、人の世の哀しみを綴る文学――貧しくも誠実に生きる板木彫師を描く本興寺更の名人芸「彫師」(『文芸中部』)、仇討に一生を捧げた男を視点とする佐多玲の「仇討禁止令」(『渤海』)、牛島富美二の相思相愛の若者の心中譚「翻案 秋色柳落葉―賀美郡柳沢心中事件―」(『仙台文学』)
《対象同人誌>
萩田峰旭「火の煙」(R&W第17号)R&W 〒480‐1147長久手市市が洞一の三〇三 渡辺方
舩津弘繁「八俣大蛇―現代誤訳我流古事記―」(猿第75号)猿 〒376‐0102みどり市大間々町桐原一六〇 森方
牛島富美二「翻案 秋色柳落葉―賀美郡柳沢心中事件―」(仙台文学第85号)仙台文学 〒981‐3102仙台市泉区向陽台四の三の二〇 牛島方
源つぐみ「古井戸」(函館文学学校作品2015)函館文学学校 〒041‐0801函館市桔梗町五の一二の五 大塚方
興寺更「彫師」(文芸中部第98号)文芸中部 〒477‐0032東海市加木屋町泡池一一の三一八 三田村方
佐多玲「仇討禁止令」(渤海第69号)渤海 〒930‐0916富山市向新庄町二の四の五 杉田方
夏当紀子「波間」(飢餓祭第40号)飢餓祭 〒657―0855神戸市灘区摩耶海岸通二の三の一の五〇八 田中方
その他--
《参照: 「図書新聞」2015年04月11日》
▼歌と観照 〒161‐0031新宿区西落合一の三〇の二〇の一〇一 歌と観照社
▼黄色い潜水艦 〒630‐8282奈良市南半田西町十八の二 宇多方
▼驅動 〒143‐0024大田区中央三の三〇の七の五〇一 飯島方 驅動社
▼新アララギ 〒101‐0042千代田区神田東松下町一九 興亜第一ビル4F 新アララギ発行所
▼現代短歌 〒113‐0033文京区本郷一の三五の二六 現代短歌社
▼詩と眞實 〒862‐0963熊本市南区出仲間四の一四の一 今村方
▼綱手 〒662‐0098西宮市毘沙門町六の二四 井上方
▼塔 〒606‐8002京都市左京区山端大城田町二〇の六〇六 吉川方
「現代短歌」(第三巻第三号)が、筑豊炭坑の歌人・山本詞(昭和五年~三十七年)の歌と生涯。「落盤に埋れて死にし今日の坑夫空弁当をひとつ残して」・「この疲れ語りたき妻など吾になし坑出でて驟雨に打たせ洗ふ半裸を」という哀切極まりない歌。黒瀬珂瀾と松井義弘の山本についての解説も貴重。そして視力障害であるのか苅谷君代の「握手するやうに白杖持つ右手「よろしく」なんてつぶやいてみる」(塔第721号)、阪神・淡路大震災を念頭に正田益嗣の「病院のベッドに伏して助けてと妻が叫びゐし声いまも耳を離れず」(新アララギ第206号)も、やりきれない哀しさ・寂寥を感じる。しかし、それでも人は生き抜くべきだ。
詩では奥西まゆみの「久坂葉子のいた神戸」(驅動第74号)が、久坂葉子の人生と作品を踏まえて、「あなたは/今日、ふたたび/うまれた。」と綴る。 「歌と観照」第952号が和田親子、「黄色い潜水艦」第61号が太田順三、「詩と眞實」第788号が金子靖、「綱手」第320号が田井安曇、「塔」第721号が二上令信・初子夫妻の追悼号(含訃報)。
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