文芸同人誌「コブタン」NO.39(札幌市)
【「現近代アイヌ文学史稿(四)」須田茂】
本号では第6章「歌人たちの登場~内なる越境の始まり(続)として歌人・森竹竹市(1902年~1976)の文学について記している。森竹は、遠星北斗、バチュラー八重子と並んでアイヌ民族を代表する詩歌人として有名であるそうだ。2000年1月、森竹の聖地・北海道白老町に森竹竹市研究会(伊東稔会長)が設立され、遺族から預託された遺稿などの資料を中心に研究が進められているそうである。
文芸同志会は、発足当初から2年前までNGO「市民外交センター」に支援をしてきた(過去形です)。活動のひとつに「日本人は単一民族である」とする政治家の発言に表わされるような、歪んだ民族意識を正すべく活動をしていた。国連での「先住民族の権利に関する国際連合宣言」でのアイヌ民族の存在と対象について認めさせることがあった。文芸同志会では、台湾の先住民たち日本統治時代の「高砂族」などの係累が、日本人兵士として靖国神社に合祀されていることについての活動にも関係してきた。
そのような活動も重要だが、なんといっても文学的な文化活動でそれら民族の精神を広めることは大いに意義がある。現在はクールジャパンなどと称して、日本伝統文化の特異性を世界に広める動きがある。長い歴史のなかで、さまざまな民族の文化・思想・習俗が島国のなかで衝突と混合をして作り出した文化遺産を今、世界に出して食い潰しているのである。それらの結晶を、テレビなどメディアがもてはやし、自信喪失した日本人の誇りを取り戻すとしている。しかし、それ培ってきたのは多様な民族的人間性であって、国民の一部を他者として排除する人々によるものではない。
【「野を翔る声(後編)」石塚邦男】
前回で終わったのかと思いきや、続きがあったようだ。執筆姿勢のフットワークの良さが感じられる。このように続きが出てくるのも、この小説の主人公がアーチストで、東京にったかと思うと、また北海道にもどるという、観察行動型の語り部として機能しているからで、途中もそれぞれの読みどころがあって面白く読める。このスタイルについては、文芸交流会での記録にも書いたが、ジョセフ・コンラッドの間接的な話法の系統がある。また、アメリカのハードボイルドミステリーの定番形式でもある。探偵事務所に、依頼人がやってきて、問題解決を頼む。すると探偵は、その問題を追求する。それが、終わると探偵はまた事務所に戻って、依頼人を待つ。それであるから、いくらでも話が続くというわけである。
発行所=〒001-0911札幌市北区新琴似十一条7-2-8、須貝方。コブタン文学会。
紹介者=「詩人回廊」北一郎。
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コメント
「コブタン」39号の紹介、ありがとうございます。
須田茂「アイヌ文学史」は貴重な研究内容で、内外の研究者の注目を集めています。
「アイヌ文学史」として本邦初の大事業と思いますので、われわれも完成を期待している労作であります・ヽ(´▽`)/
投稿: 根保孝栄・石塚邦男 | 2015年4月 7日 (火) 03時27分