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2015年4月 3日 (金)

文芸同人誌「日曜作家」第9号(茨木市)

 本号は2015冬号とあるが、ちょびちょびと読んでいるうちに春なってしまった。文学の基本は、読者と作者にとって癒しの素であることが望ましい。同人誌は作者の癒しが優先されるのは仕方のないところだ。
【「スルリカー」甲山羊二】
 一人称によるおしゃべり事という設定。内容は、人妻のちょっとした浮気心を軸に、彼女のお喋りが想像力をかきたて、単一視点でありながら、他で何がおきているかを想像させる構造。そこは読者に想像させる仕組み。おしゃべりなのに無駄話でない、書かずに描くための話法と文章力の優秀さが出ている。オチまでついて、読んで楽しめるお話。
【「女流作家」紅月冴子】
 女性が恋人をモデルにしヒントにした小説を書き、文学賞を受賞する。恋人の男はモデルにされたことで、心穏やかならぬ様子になる。そこで悩む。話の運びにスピード感があり、面白く読めるが、どちらかというと大衆小説。男の人間像が描けていないのが不満。文章を整理し、無駄を省くと作品の品位が上がる余地を感じさせる。
【「咲野・山頭火の妻」冬木煬子】
 小説化すると、こんなに面白いものかと、眼を見張らせられた。
【詩「片想い」佐藤柚奈】
 想われるより、想うほうが心豊かで幸せかも、と心が癒される。
【「土筆は摘まない」堀章子】長編で何枚書いても、このような父親と娘の像を心に刻みつけることはできないのではないだろうか。短いからこそ、鮮やかにその情景が伝わる。これも癒される。みんなに読ませたい1編。
発行所=大阪府茨木市上野町21番9号、大原方、「日曜作家」編集部。
紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一

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