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2014年12月 5日 (金)

著者メッセージ: 伊東英朗さん 『放射線を浴びたX年後』

  子どもの頃、よく親から「雨にあたると髪の毛が抜けてしまうぞ」と言われていた。単なることわざのようなものだと思っていたが、10年前、その言葉に秘められた大事件を偶然知ることとなった。ことわざなんかじゃなか
 った。
  実際に、あたると髪の毛が抜けかねない雨が降っていたのだ。「黒い雨」で知られる原爆の、1000倍の威力を持つ水爆。その水爆を製造するための実験が太平洋で行われ、その結果、放射能雨がこの日本にも降ったのだ。実験は何度も何度も行われたし、放射能雨が降ったのも1年や2年じゃない。
  この事実は隠されていたわけではない。当時、新聞では大々的に取り上げられ、日本中が大騒ぎになった。ただ忘れ去られただけ。
  そんな事件を追いかけて、今年で10年目になる。2011年3月までは誰にも相手にされなかった。福島の事故が起こった瞬間からあふれかえった一連の報道には、絶えず既視感を覚えた。追いかけてきたあの事件と同じだ。
  だからテレビディレクターの僕が、この事件をテーマに映画を作った。そして本にした。今、伝えなければならない。 (伊東英朗)(講談社『BOOK倶楽部メール』 2014年12月1日号より) 


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