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2014年12月18日 (木)

文芸同人誌「海」第90号(いなべ市)

【「辿り着いたら清掃夫」宇梶紀夫】
 いつものことながら、取材をよくして書いているようで、仕事の内容から収入まで、清掃業の仕事の様子がよくわかる。経済が成長しない成熟経済のなかで、70歳を過ぎても働くひとたち。時代の流れに沿って現実を受け入れる庶民の姿が印象に残る。
【「非母日録」紺谷猛】
 自らの老いの実感と、どこか不健全に思える生活ぶり。その嘆きと戸惑いが伝わってくる。
【「夏の別れ」白石美津乃】
 子供ふたりに恵まれた平凡ではあるが、普通の平和な家庭を築いてきた主婦。だが、かつては、英国にホームステイをした時のその国の男性との恋の兆しをもったことがある。あの時、もっと積極的な行動に出ていたら、今頃はどんな生活をしていたであろうーーと夢想する話。ちょっと面白い。非常にリアルで現実的である。小説の小説たるところは、ここがはじまりで、非常識なことがはじまるところではあろうが。
【文芸エッセイ「病床ノート」久田修】
 体調を崩して、ベッドで読書と回想にふける。サルトルのジャン・ジュネ論などは自分もわからないながら新潮文庫で読んだ。病気はつらい筈だが、読む楽しみが溢れているのが、文人精神というものであろうか。
【「迷い猿」国府正昭】
 両親が交通事故で亡くなり、葬儀や役所の手続きで郷里に戻って滞在しているが、そこで猿が出没するようになっていた。迷い猿だという。親の世代とは価値観が変わり、日本人そのものが迷い猿になったという寓話にも読める。
発行所〒511-0284三重県いなべ市大安町梅戸2321-1、遠藤昭巳方。
紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

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