« 文芸誌「なんじゃもんじゃ」爽籟号(通巻第18号) | トップページ | 第19回文学フリマ11月24日に出店します。 »

2014年11月23日 (日)

文芸同人誌「文芸中部」97号(東海市)

【小特集・亀山郁夫「新カラマゾフの兄弟」を読む】
 同人誌の書き手が、一つの作品を読みあって、その読書録を集めという、意欲的な新企画である。これはロシア文学者で名古屋外国語大学長の亀山郁夫さん(65)が、初の小説「新カラマーゾフの兄弟」を執筆。亀山氏が講演した縁であろう。「中部ペン」第21号に文学講演録・亀山郁夫「ドストエフスキーと小説について考える」(遠藤昭巳氏まとめ)が掲載されている。
 亀山さんの「新カラマーゾフの兄弟」は、「文藝」に掲載された。1995年の日本を舞台とする「黒木家の兄弟」と、ドストエフスキーを意識してきた自身の半生を投影した「Kの手記」の、二つの小説を交互につなぐ形で進む。
 文学眼に優れた面々がそれぞれの感想を述べていて、大変興味深い。自分はたまたま亀山氏の「ドストエフスキー~謎とちから」(文春新書)を読んでいる最中だった。やはり打ち込んでいる作者に接しているうちに、書きたくなるということはあるのだろうと思う。
【「山ぶどう」西澤しのぶ】
 日本の震災を取り入れた、地元の人の話。粘り強い筆致で丁寧に書きこんでいて、読み終わったら、意見も言えないほど疲れた。
【「いま、このとき」堀井清】
 なめらかな文章で、読者の想像を引き出すような省略の効いた表現法は、作者が手中にしたもののようだ。自分も枯木も山の賑わいで「グループ桂」という同人誌に作品を出すことになったが、どのような文体にするか、まず考えた。そこで堀井氏の文体が頭に浮かんだ。前回の「ライバルの時間」と本作をじっくり読んで検討させてもらった。とくに、今回は日常性から事件性を含んだところに向かっている。私は事件性を先に出して、あとを曖昧にするという順序を入れ替えてみた。文章の滑らかさは持ち合わせていないので、最初から独白体にした。そういう工夫の勉強をさせてもらえる作風である。
発行所=愛知県東海市加木屋泡池11‐318、文芸中部の会。
紹介者=「詩人回廊」北一郎

|

« 文芸誌「なんじゃもんじゃ」爽籟号(通巻第18号) | トップページ | 第19回文学フリマ11月24日に出店します。 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 文芸誌「なんじゃもんじゃ」爽籟号(通巻第18号) | トップページ | 第19回文学フリマ11月24日に出店します。 »