詩から小説へ 佐藤裕
詩人回廊の「佐藤裕の庭」が活気をもちはじめた。今年は、過去の庭に掲載した作品を年代別に集め、私家版として冊子にしてきた。発行所は「文芸同志会」である。ページの合間には北一郎が解説をいれて文字数の調整にした。そこで指摘したのは、当初は、インスピレーションによる孤独なイメージの展開を軸にした詩風から、年代を重ねるごとに叙事的になり、具体的な人間関係を題材にするようになった。それも恋愛関係、家族の物語に移行していることだ。それがついには散文的な小説形式をとりはじめた。いずれも創作性が強い。詩から散文への移行となると、私的心象の表現になるのが自然と思っていた。それに対し、佐藤裕氏は小説的である。考えてみれば、井上靖なども小説的な散文詩から小説に変わった例もある。
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