林真理子「マイストーリ」とセールス電話=外狩雅巳
自費出版社員を主人公にした林真理子「マイストーリ」新聞連載を連日楽しみに読み続けている。
そんな今日。久しぶりに自費出版社からの営業電話がかかってきた。一年ぶりである。かつては毎月あちこちの出版社から来ていた。久しぶりに元気に対応してみた。
先ず、広宣社と名乗ってきた。こうせんしゃと言う発音から想像した社名である。新人社員だろうか、抑揚のない棒読み的な言葉はマニュアルのままなのだろう。
図書館で外狩さんの本を読みました。大変感動しましたと無感動に語っている。
つきましては、明後日の産経新聞に一ページを使い一期一会の感動と題して広告します。
この感動を多くの人に届けたいと思っています。次々に無感動な棒読みが続く。
ひとしきり言いつのった後にようやくいかがでしょうかと質問してきた。やはり、朝日新聞での「マイストーリー」が業者にやる気を起こさせたのだろうか。
しかしこれはひどい。こんなトークでは客をその気にさせるのは2百%無理だろう。
有難うございますと答える。わざわざ読んでもらってうれしい限りです。
僕の「青春は陰りて」多くの方からそのような感想を頂いています。もっともっと読んでもらいたいのですが。もう本が残ってないんです。
どのくらいありますか。
一冊しか無いのでどなたにもお渡しできないんです。
とたんに、反応が変わった。そうですかわかりました。カチャリと切れた。
一日中電話機に向かって同じトークを繰り返す。千に一つは受注できるのか。
若い頃、そんな会社に面接に行った事が有った。無理だと思い入社しなかった。
社内はそんなトークを繰り返しながら一本上がりと報告する社員達が多数就労中だった。
企業広告を集める会社で電話先は業種毎に電話帳から虱潰しに掛けまくる仕事だった。
馴染になった企業から再度の広告受注があり結構業績も上げられ出来高制賃金の会社だ。
それでも、毎日おなじトークの電話をかけ続ける仕事にはとても無理と思った。
そんな仕事で頑張る相手にはもう少しいたわりの言葉も言った方が良かったかな。
以前、一人70万円で新聞一面広告に数十人が羅列される誘いを断った事があった。
需要があるから自費出版もその広告も成立しているのだろう。美味しい業界。そう考えると、新聞小説の内容も妙にリアリティーを感じる。
《参照:外狩雅巳のひろば》
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