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2014年9月17日 (水)

文芸同人誌「雑木林」第16号(枚方市)

 表紙をめくると「しばしお休み号―北川荘平生誕84年没後8年」と記されている。休刊の宣言である。
【「北川荘平先生と枚方・雑木林文学の会―書くという病」安芸宏子】
 作者は織田作之助賞の下読みをしていて、そこで正選考委員の北川氏に出会った。文章教室の講師となった北川氏に師事し、雑誌「雑木林」の23年間運営のこれまでの縁が記されている。
北川氏は人間の精神が何かに圧迫された状況があるから書くことをするので、「書かなくてよい状態になったら幸福」と考えていたらしいという推測をするのが興味深い。
 そして「書く以上は、書きたいもの、伝えたいものをなるべく確かに伝えるためにある程度の技術や書き方があることを教えたかった。それがわが枚方・雑木林文学の会での北川先生の考え方であり指導だったのだと思う」とも――。
 生活の実感を書き伝えることが、生きる意味を生むという効用がある。これは多くの同人誌サークルの底流であり、方向性を示したものであろう。そのために、それらは生活上の「同一世代性」の特性を持つ。高齢化によって活動が不活発になるのは止めようがない。
 本号ではその一方で、伝える技術の研鑽として、競作「手」をテーマに、各同人が掌編を発表している。
これは文章技術を競うという、仲良しクラブ的な同人誌にはない、挑戦的なもので、北川氏の精神の反映がみられる。
 競作の作品を読むと、言葉の芸術として高度な完成度を見せる作品があれば、素朴な生活日記的なものもある。作品の完成度は異なるが、それでも生命感や感動という面では、芸術性のあるものに負けす、素朴な生活日記の方も伝達力をもつのが不思議だ。
 編集者の渾身の力がみなぎる第16号である。
 また、コラムで北一郎詩集「有情無情、東京風景」について、評を執筆してくれている。北のもつ詩精というものの思い込みの本質をよく言い当てていて、喜ばされると同時に驚かされた。
 発行所=〒573-0013枚方市星丘3-10-8、安芸方。
紹介者=「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。

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