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2014年8月26日 (火)

林真理子「マイストーリー」と我が体験=外狩雅巳

 朝日新聞朝刊の連載小説・林真理子「マイストーリー」が自費出版作品について書かれていて面白い。
 事業の成功談。子育ての苦労談。学問の成就への艱難苦闘談。人に語れる誇りのある内容が多い。
 成功者の資産を目当てに出版を勧める営業マンの内心が覗ける。それでも発表したい作者も多い。
 自分の出費で作品を発表するのは同人誌作家も同じである。作品量が増えたら自費出版する人も多い。
 読者を期待して世に出している。同人誌発表なら同人仲間の合評会で直接に読後感想を聞かせて貰える。
 同人誌に失敗談を深刻ぶって発表して勘違いされた私。北一郎はそこを見つめて分析している。
 企業内正論が納得できず馘首される人たちの姿を描いた作品の多くは「頑張りの効かない主人公のちゃらんぽらんな行き様」と読まれた。
 更に続けて、「何を書こうとしているのだ! 頭の中に明確な理念が無い」とダメ押しされてしまった。
 生き様についての前向きな理念が読み取れない作品ばかり書いてきた私。下層労働者としての生涯。小林多喜二作品のような階級的自覚を書き込めず、働く者の未来に展望をも目指せぬ作品ばかりです。
 反体制過激組織に共感しても運動から脱落する主人公。職場スポーツでも勝者になれない主人公。その姿を変革への期待に向けた、裏腹の自己批判として書いた。
 「弱虫の作品は嫌いだ。五味川純平の「人間の条件」に登場する梶のようなへこたれない態度こそ書くべきだ!」と初代の同人会会長に酷評された「相模文芸」発表作品「28歳の頃」。読み手との齟齬は多数あります。
 自費出版すれば同調してくれる読者に出会える、多数の販売で利益まで出るかもと期待しました。
 営業マンが言えばそれに縋ります。三百冊では少ないと乗せられて五百冊も自費出版しました。
 二百冊近くが売れたのでと三十万円程返金されたら二百万円の出費も忘れて喜びました。
 業者の掌で弄ばれる作者。林真理子新聞連載小説「「マイストーリー」はその業者の内面を描いていて面白く、苦く読んでいる。
 人生の壁で苦闘する作品を同感で読む北一郎は、我が作品の特性について、多くの底辺労働者へのメッセージと指摘している。
■関連情報:「外狩雅巳のひろば

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