文芸同人誌「みなせ」第63号(秦野市)
【「山のつむじ風―神サマ常次郎(1)」小柏正弘】
自由民権運動の広まりの中で起きた群馬事件(明治17年)を記録風に書き起こしている。今回は初回で百枚。著者の縁者なのか小柏常次郎と言う騒乱の首謀者が主人公である。ドキュメントタッチで臨場感のある風物・人物の描写も多用。調査も豊富に活用している。ノンフィクションとジャンルを明確化する作者はやはり主人公の縁者だと推測できる。明治維新が政変か革命かを問う論評や作品は多いが当時の農民の視点で書かれている。群衆個々に名指しで生活と行動を書き連ねる手法は引き込込まれた。
草の根の思想と行動は明治初期の日本の実態を浮き上がらせ成功している。フランス革命等の西欧事情がどう日本で浸透し展開したかが分かり力作と感じさせる。
【「オブジェクション143」岡森利幸】ニュース紹介と解説風の評論である。筆者は、これまで毎号距離を置いて書いていたが、今回は少し踏み込んで、八編の事件を紹介している。その一つ、都議会での女性議員への野次については大いに持論を展開している。「女が腐れば男がすたる」の一文で論を閉じている。
発行所=事務局・編集--神奈川県秦野市南ヶ丘5-3-16、岡森利幸方「みなせ文芸の会」
紹介者=「詩人回廊」外狩雅巳
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別記=文芸同人誌「みなせ」は季刊。今号は、17作品が236頁に盛り沢山。1ページ400円という破格の掲載費で運営を続ける事も盛会の一つの要素だろう。丹沢山塊の麓の渋沢駅前での合評懇親会に毎度誘いが来ている。参加費三千円。ホームページも持ち若者の参加も多い。私の古い文芸仲間がいて注目している。パソコンからの寄稿が主だが手書き原稿も集めている。高齢者にも手厚い会である。安価な発行はパソコン活用だろうが十万円台の費用で仕上げるのは苦労もあろう。《参照:外狩雅巳のひろば》
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