文芸同人誌「群系」第33号(東京)
【小説「会長ファイル・福祉バス」小野友貴枝】
社団法人・地域福祉センター長である英田真希の一年間の行動が描かれている。県庁を定年後に就任して二年目の正月の神社参拝時の決意から翌年の参拝前日まで。
行政の地域高齢者施策を請け負うセンター12名を管理し運営を先導する主人公。事業の大半を占める福祉バス運行を廃止する決意と実践の記録的作品である。
澤事務局長である大曾根班長の二人を説得しセンター再生へ前向きに行動する女性。組織のトップで行動する女性から男社会・行政内部を書いた事にわたしは注目した。
お役所仕事で絡められた事なかれ主義男性幹部達とのやり取りは迫力がある。25枚程度に纏め、行動進捗を時系列で追う記録風な仕立てが読みやすい。
その中に女性視点と内面描写を入れて文芸作品とした著者異色の一作になっている。多分、多くの読者に小説としてより行政施策の内部仕組みに興味が持たれるであろう。
となると、税金使途に厳しい読者からは別の感想も出る可能性がありそうだ。作者に近い主人公を思わせる書きぶりはそのあたりの事に鈍感とも感じた。
重圧をはねのけ行動する女性を描写する意図が題材に阻まれる危険がある。老人ホームでの虐待などの記事も多い昨今、文学作品として読まれるだろうか?
「群系」発行編集部=江東区大島7-28-1-1336 永野悟方、「群系の会」
紹介者=「詩人回廊」外狩雅巳
☆
別記=雑誌「群系」は、300頁余りに詰め込まれた作品作家論・自由論考で評論同人誌の重鎮誌。その中で小野友貴枝氏は少数派の小説作品として気を吐いている作者は多くの著書を持っている。文芸交流会(町田市)の会員としても活動し、繊細な女性心理や恋愛模様を書かせたら多くの読者を堪能させる筆力がある。その筆力が書かせたこの作品。どう読まれるのだろうか。参照《外狩雅巳のひろば》
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コメント
「群系」は小説が弱いので、外狩さんも書いて刺激を与えてあげてください。
投稿: 根保孝栄・石塚邦男 | 2014年8月10日 (日) 23時05分