辻村仁志「ゼロ時計」をまほろば賞関東交流会推薦=外狩雅巳
関東同人雑誌交流会(5月8日開催)参加の報告をします。梅雨入りの大雨も一服した曇り空の日曜日六月八日(日)に関東交流会が行われました。会場は大田区民プラザ三階。招集は文芸思潮の五十嵐勉さん。出席者は八名でした。
同人誌「飛翔」の鹿児島良男さん。同人誌「銀座線」の石原恵子さん。同人誌「群系」の澤田繁晴さん。同人誌「白雲」の岡本高司さん。同人誌「私人」の長野統さん。同人誌「普恋洞」の小野光子さん。それに、私と五十嵐さんです。三年前の五月に通知された対象者一覧では46人中13人の参加でした。
全国同人雑誌最優秀賞「まほろば賞」の候補として、関東推薦対象に下記の六作を五十嵐さんが提示しました。同人雑誌「街道23号」より木下径子「持って行かれたもの」、佐々木欽三「通夜の疑惑」、同人雑誌「時空」40号より、福島弘子「遠い飴」、平野潤子「存在」、同人雑誌「空飛ぶ鯨」14号より辻村仁志「ゼロ時計」、同人雑誌「銀座線」19号より河井友大「過去に生きる女」です。
討論後に投票を行い辻村仁志「ゼロ時計」が高得票で関東推薦作品になりました。
この作品は近未来を想定した労働者悲惨物語です。豪雨の日に製菓企業の追い出し部屋での出来事です。内臓に模したチョコ菓子を試作する窓際労働者達が遭遇する事態の不思議な一致と時刻の一致を書きます。豪雨と共にミステリアスな筋運びで展開するコミカルでいて悲哀あるストーリーは読ませる作品です。私はSF作品仕立てにした資本主義批判と読み一位投票をしました。賛同者も多く当選しました。
同人誌「空飛ぶ鯨」は大阪文学学校修了生中の関東在住者が結集する会で所在地は埼玉です。宮本百合子の唄声よ興れと呼び掛で結成されたプロレタリア文学運動の戦後版が新日本文学会です。それが現在まで続きました。東中野の本部で文学学校を開き大阪分校が大阪文学学校です。職場民主化・現実路線・選挙路線の共産党系が民主文学会として分裂した経過があります。
社会批判を書きながら現実を直視しない作品中にその臭いが見えました。しかし、現実政治に絡められたスローガン主義を嫌えばこの模索にも可能性を期待しました。
関連情報=作家・外狩雅巳のひろば
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