同人誌「文芸きなり」第78号(三重県三重郡)
本誌は文章教室から始まり、84年から30年続く会。当時の師である評論家の清水信が同人誌の歴史や情報を「中部誌史」として連載中です。現在会員12名。内男性は二名。百頁強で二回発行。月例合評会を名古屋で行っているそうです。
【「生きるということ」西垣みゆき】
高花華の営むプディックに来た客である小学校同級生だった河井治子との回顧談で、53才の主人公が小学三年の時に治子に唆されたキャラメル盗難の思い出を巡る会話です。
心の傷として構えて持ち出す主人公に対して大袈裟だと反論する治子の生き様が重い。「あなたは一度の罪に怯えていたけど、私は華ちゃんの何倍も罪を重ねて来たわ。」と治子が語る盗みをも厭わない過去の日々。その上で得た生き甲斐を聞かされる主人公。
―本当の気持ちは私にしか分からない。寂しさも生き甲斐も、個人のものーと書き、―自分で解決していく他はないーと続ける。過去の盗難事件を二人だけの秘密にする。
30数枚の作品だが大詰めの終盤で纏め上げている。読み終わらせる工夫が巧みである。
発行所=〒510-1242 三重県三重郡菰野町大羽根園柴垣町13-8、西垣方。
紹介者「詩人回廊」外狩雅巳
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別記=本誌との出会いは、西垣美幸さんから毎号送付を受けている。「文学街文庫」での共著がきっかけです。この文庫本は同人会「文学街」の主宰者である森啓夫さんに作品参加を誘われました。巻末の著者住所表の各人に雑誌「相模文芸」や個人出版本を送り繋がりを作り続けて来ました。
彼女とはまだ面談は有りませんが毎回の返信は欠かさない方なので親密さを感じています。作品からの推測では六十代後半の方のようですが毎号掲載しています。今号は巻頭です。後記には十名が一言を寄せていて高齢女性達の親密さと文芸意欲が伝わってきます。外部との交流も盛んで今号中には受贈誌一覧表もあり「中部文学」など12誌が連なっています。印刷同封の送付状には103才の御尊父との同居やパソコン買換えなどの私事も載せています。数行の手書き追加文もあり気配りのある送付を受け取り私ももてなす気持ちになりました。
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