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2014年6月 5日 (木)

同人誌「コブタン」№.37(札幌市)

【「再び霊鷲山に佇つ」須貝光男】
 副題「妻と二人の霊鷲山」とある。80歳にして、インドの釈尊の布教活動をたどる話。ブッダの遺跡をめぐりその現在を伝える。読み手の自分は、いわゆる唯物論系の思想の持ち主である。座禅を体験している。仏教が唯物思想と全く対立することがないのを感じている。この現地レポートでは、遺跡でサルに噛まれて治療を受けたり、異国の民衆に出会い、そのなかでブッダの思想をたどる、面白いということはないが、如是我聞ではじまる経文を読誦した経験から興味は尽きない。なかなか貴重な記録である。
【「維新前夜・江戸城」石塚邦男】
 本来ならば、明治維新は革命であり、体制側と反対体制側が戦火を交え江戸の街は炎上壊滅したいたかもしれない。なぜ、そうならなかったのか。相容れない対立条件をどう譲り合ったのか。尖閣問題や慰安婦問題など現代の政治家や官僚がいかに交渉技術において、子供じみて無能かがわかる。本作品はそのような問題意識から出たものではないらしい。君主や志士の活動ぶりを良く調べ、物語にしている。資料や人物の紹介もある(勝海舟がないが)。文明開化の歴史の副読本にむいている。ただし、このようなスタイルであるなら、文体を「ですます」」調にした方が自然に文章のほうから立ち位置を決めてくれるものであろう。
【「壊す人」清水俊司】
 森の壊す人の幻想的なお話。「ですます」調の効果的雰囲気で楽しく読める。
〒001―0911札幌市北区新琴似11条7‐2-8、コブタン文学会。
紹介者「詩人回廊」北一郎

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コメント

太平洋戦争の末期、アメリカは日本本土を無差別爆撃、あまつさえ原発2個を投下してダメ押しをした。アメリカの非人道的行為は批判されるべきであったでしょう。また、日本の大本営は、敗戦が決定的となってからも、本土決戦を強行しようとした。

しかし、幕末の賢人たちは、百万都市の江戸を焦土とすることを避け、無事に和睦の道を選んだのでした。無駄な血を流さず、平和革命を哲学として行動した賢者の戦いを、太平洋戦争の軍部は歴史から少しも学んでいなかった、ということでしょう。西郷隆盛と勝海舟が太平洋戦争時、日本の軍部にいたとしたら、太平洋戦争の悲惨な終末はなかったでしょう。幕末、世界を知っていた軍人たちは、欧米の戦争の歴史、戦術に熟知していたからこそ、欧米の干渉を退けて、内戦の収束を図ったのでした。その教訓を、その後の近代日本の軍部は何一つ学んでいなかったということです。私の幕末物は、もう一度歴史を学びなおせ、と暗黙に問いかけたかったこと、その一点にのみあることを、みなさんにお汲み取りいただければと思うのですが・・。( ̄ー ̄)ニヤリ

投稿: 根保孝栄・石塚邦男 | 2014年6月 7日 (土) 07時13分

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