文芸同人誌「北狄」366号(青森市)
本誌は創刊60週年で、366号というからよくも続けたものである。この間に、どれだけの商業文芸誌が刊行され姿を消したか? に思いを馳せると非商業の文誌同人誌の役割の重さを感じる。
【「長春物語」笹田隆志】
2010年に中国・吉林師範大学に日本語会話と文章の講義に良一が滞在した四ヶ月のレポートである。中国といっても広い。全体把握は無理で、こうした地域的な交流報告は、国民的相互情報交流に役立つと思う。日本と中国は、反日、領土問題、安倍首相の靖国参拝で国がギグシャクしているが、国家と諸国民とは同じでない。国家は権力、利権のために、まず国民の一番弱いところを犠牲にする。どの国であろうと、国益のための戦争は諸国民の利益にならない。メディアの国家の報道の煽情の意図に乗らないためにも、こうしたレポートは意義がある。
【詩編「月に沈む(二)」倉谷ひろたか】
東日本大震災が直接的な題材となって、宮沢賢治の世界とも連結させて、現実の重みを受け止めながら、それをイメージ力ではねかえそうという、読み応えのあるものになっている。リフレインと行替え、飛躍性など詩ではあるが、全体的には、散文詩に近い。このように詩と散文の枠を超えた作品は、昔からあるが、現代ではもっと多くても良いように思う。
発行所=青森市安田近野435-16、北狄社。
紹介者「詩人回廊」北一郎
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