文芸時評4月(東京新聞4月28日)沼野充義氏
園子温「毛深い闇」=鮮やかな小宇宙つくる
村田沙耶香「殺人出産」=命を考えさせる強み
≪対象作品≫園子温「毛深い闇」(「文藝」夏号)/早助よう子「妊娠同盟」(すばる)/村田沙耶香「殺人出産」(群像)/木村友祐「聖地Cs」(新潮)/特集「人文書入門」対談・小林康夫~大澤真琴/ガルシア・マルケス「百年の孤独」/大西巨人「神聖喜劇」。
園子温「毛深い闇」=鮮やかな小宇宙つくる
村田沙耶香「殺人出産」=命を考えさせる強み
≪対象作品≫園子温「毛深い闇」(「文藝」夏号)/早助よう子「妊娠同盟」(すばる)/村田沙耶香「殺人出産」(群像)/木村友祐「聖地Cs」(新潮)/特集「人文書入門」対談・小林康夫~大澤真琴/ガルシア・マルケス「百年の孤独」/大西巨人「神聖喜劇」。
「感動は説明できない」石原千秋早稲田大学教授
--荻野美穂『女のからだ フェミニズム以後』(岩波新書)を読んで、これは医学の問題であり、資本主義の問題であり、そして文学の問題でもあると思った。荻野美穂は長く生殖技術の問題を告発的に論じてきた研究者だ。帯の惹句(じゃっく)に「わたしのからだは、誰のもの?」とある。タイトルも含めて、「体」を「からだ」と平仮名で表記した意味も重い。漢字は男の文字で、平仮名は女の文字だったからで、「女のからだ」は男には手渡さないという決意が見える。
-村田沙耶香「殺人出産」(群像)は、「産み人」として子供を10人産んだら、人を1人殺す権利が与えられる世界を書いている。少子化対策として導入された制度である。男も手術を受けて「産み人」になれる。この世界では、「産む」という営みが性を離れて、殺意と結びつけられている。つまり医学の進歩が、殺意によって人口減少に歯止めをかけることを可能にしたのだ。この小説が提起しているのは、「産む」営みがもはや医学上の問題となりつつあること、殺意はどこにでも存在しうることである。たしかに、僕たちはいまや殺意が充(み)ち満ちた世界に住んでいると感じる。村田沙耶香の小説は気味の悪いテイストが持ち味だが、それは現代社会に挑戦状を突きつけているからであって、提起する問題の大きい秀作だ。結末は希望を思わせるが、そんなセンチメントはなくてもよかった。
文芸同人誌の活動は合評会という顔合わせの集いがあるための地域的な特色があるが、その一つの流れとして、外刈雅巳氏の解説がある。《参照:外狩雅にのひろば》。町田の交流会では、伊藤も参加する予定であるが、何故このような流れになるのかなどのこれまで観察してきた社会的な構造の変化と合わせて、解説してみようと思う。それが専門なので、そういう視点では、あまり分析がないので、作品発表の姿勢につて考えるヒントになればよいと思う。
【「高円寺の家」小野友貴枝】
同人雑誌作品としては長編の200枚に及ぶ小説です。作者渾身の力作であるな、と思いながら読みました。内容は、夫の家庭内暴力に苦しむ中年の妻を主人公にしています。昔の恋人との再会が絡みます。
松井麗子からの夫松井恵弘の関係記述が三分の二に及んでいる。夫の視点からは、わずかですが描かれています。
昔の恋人、家庭教師であったの笹森航太の視点からの記述が二割程度あります。妻の笹森佐和との事も少し描かれます。青春期に英語を習い肉体関係に及んだ笹森との再会から、ふたりの関係修復に至るお話が中心になっています。
現在は、学校教師となっている麗子は、事に生きています。機会があり大学準教師の職を掴み取り意欲的に生きています。定年後、家庭に籠る夫の暴力傾向は強まり、子供たちも寄り付きません。別居から離婚を願望中です。
通勤電車での笹森との再会がこの作品を加速させます。二人の身体が結びつくのは必然として書かれます。
笹森のセカンドハウスに住み、夫と別居する麗子です。そこで病弱な笹森の妻・佐和が亡くなります。夫の暴力描写が繰り返し書かれます。麗子の心象風景も多く作者の意図が良く分かります。
ハッピーエンドは中年女の本音のメルヘンとして読者も共感してしまいます。閉ざされた世界の作品です。
医療の世界・そしてキャリァウーマンの世界。男女の性愛関係。作者は得意分野で存分に書きました。
女流なので麗子に密着し、長くと書き込む部分は厚みとして理解しますが、もう少し刈り込んだ方が良いような気もします。どうでしょう。文章は判り易く読者が入り込めるように工夫されています。会話も地の文も書き慣れた安定感があります。
家庭教師であった航太との青春時代の描写は力づくでこなしています。恩返しに身体を提供したということになっていますね。再会し肉体関係へと進む筋書きは作者の思い入れが強く出来過ぎた話として読まれる危険性ありですね。
題名にある「家」については深い考察が書き込まれています。暴力描写はもっと凄惨でも良いかなとも思えるところがあります。それでも、力作です。二人だけの同人会誌に掲載するだけで消費されるのは残念ですね。
発行所=〒257-0003秦野市南矢名1-5-13-4F、秦野文学同人会。
紹介者=「詩人回廊」外刈雅巳。
追記=本作品は、町田文芸交流会発足の最初の合同合評会対象作品です。町田文芸交流会で外部の読者の感想を得る事は大いに作者の励みになるでしょう。今後も多くの同人会グループの作品が読まれ議論され、伊藤昭一氏の視点で得るものがある事も期待します。
本誌は西田書店による市販雑誌で、売り上げカードもついている。執筆者は大阪、埼玉、神奈川在住者たちで多彩だ。このような形式の雑誌がほぼ30号にわたり発行されていたとは驚きだ。
【「『瑠璃色の海』に捧ぐ」遠野美地子】
作者の知人であった別技(べつき)幸隆(ペンネーム岡本隆)氏が、亡くなったとの報を娘さんからもらう。その追悼として岡本氏が2007年に「あとらす」16号に発表した作品「瑠璃色の海」の梗概と一部引用をしたもの。追悼文の一種であるが、意欲的なものがあり、作品の梗概でも、文学性の含蓄がよく保たれ、表現されている。
【「ことばの雑記帳・第九」秋間実】
言葉のいろいろについて、単語が音、訓の読み方などで、どれほどさまざまに変化をするかを書きだしたもので、面白いし参考になる。「非力」と「微力」や「喪(も)」と「喪(そう)」の使われ方羅列から、「子供のころにレコードで聴いた『流行歌』の歌詞いくつか」、「<語順>ということー作家・辻邦生の文章を相手に考えるー」など、ただの知識の開陳だけでなく、人生の歴史と重ね合わせたところが、なによりも創作的である。
発行所=〒101-0051東京都千代田区神田神保町2-34、山本ビル、西田書店「あとらす」編集部。
紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一。
第21回日本ホラー小説大賞(株式会社KADOKAWA、角川書店主催)で、大賞(賞金500万円)は愛知県の雪富千晶紀(ゆきとみちあき)さん(36)の「死咒(しじゅ)の島」、佳作は東京都の岩城裕明さん(29)の「牛家(うしいえ)」、読者賞は長野市の内藤了さんの「ON」に決まった。
「町田文芸交流会」事務局は、4月29日に町田公民館第七会議室で同人誌「フレンド」の作品感想を中心に交流会を行います。文芸愛好者の行動の一つとして地域の愛好者が集まり交流を行う方法もあります。
自作の文章を集めて雑誌にする方法もあります。朗読会を開催し詩や童話を読む方法もあります。
町田市で新たに始めた交流活動は地域の文芸実態を調査する事から進めました。「町田ペン」と言う執筆者集団や[町田詩話会]等の文芸同人誌発行集団等もいくつか見つけました。
個人での自費出版本も多数が図書館におさめられていました。文芸愛好者は多数在住します。
本や雑誌の発行者。愛好家グル―プの会員表で調べ案内書を送付し積極的な方から四通の返信も来ました。
特に活発な御一人は御自分で朗読会をおこなっていました。会場確保し月例朗読会を続けています。「想書広場」と名付けて橋本に常設会場を確保し無料朗読会を行っています。交流会参加の御返事が来ました。ポエム集「虹の輪」なる詩集の一つで「ピエロとライオン」という一冊と即興詩つきの返信が同封されてきました。 その後、電話連絡が来ました。行動派の女性で娘さんが二十代だそうです。共同行動を望んでいます。
私よりかなり若いかたです。今後もこのような積極的な方々と連携出来れば明るい前途も開けます。そのためには更に多くの愛好家を見つけ出す事です。行動範囲も様々な方へと次々に連絡します。
当会の受け入れ態勢に柔軟性があれば各種の文芸愛好家との共同行動も可能かと思います。
二年来、懇談を続けてきた「文芸[交流会]の母体になる基礎メンバー6人と相談し結束をはかります。
先ずはその一人「秦野市・文芸同人会」の小野代表の作品感想会を29日に行います。中編小説です。文芸同志会の伊藤昭一氏が鋭い解説と文学講話を用意しています。濃い内容になるでしょう。
関連情報=文芸愛好家交流会(町田市)の活動報告=外刈雅巳
「人間が主体的に行動できる」という一般論的前提は、「詩人回廊」の山川豊太郎「情報化社会と生活」で「我々は、何が正しくて何が間違っているのか、本当は理解できない(あるいは、誰も示唆してくれない)、いわば宙吊り状態のまま、目の前に山積する問題群に何らかの回答を提出しなければならない――混沌の時代に生きているのである。」と、説明している「大きな物語」の流れと、異和感なく成立していた。しかし、我々が主体をもって生活しているかどうかは、わからなくなってきている。
この時代について、宇野常寛は「ゼロ年代の想像力」を出版。次のように分析した。
1995年のオーム真理教テロ事件が象徴的な、ひとつのきっかけなるとする。この時代は古い想像力の時代である。オームの地下鉄テロは、「モノはあっても物語「生きる意味、信じられる価値」のない時代が進行していた。
「不自由だがわかりやすい。話が通じるあたたかさのある時代から、自由だがわかりあえない(わかりにくい社会)になった。
平成不況で、成長神話が崩壊した。「頑張れば豊かになれる」時代から「頑張っても豊かになれない」時代になった。社会は受動的に「意味」と「価値」を与えてくれなくなった。
1995年から96年まで、アニメ作家鹿野秀明のテレビアニメ「新世紀ヱヴァンゲリヲン」が放映された。 これの主人公は平凡な少年、碇シンジ。ある日、父親が司令官を務める組織に召喚される。人類を滅ぼそうとする謎の敵、「使徒」と戦うため組織の開発した巨人ロボットのパイロットに任命される。ロボット「ヱヴァンゲリヲン」で活躍することは、父親こそ社会であり、認めらたいと思わせる存在である。ロボットに乗る事は、父の意に沿って生きること、それが息子の自己実現である。
しかし、碇シンジは、物語の後半で、「エヴァ」に乗る事を拒否して、内面に引きこもり、社会的自己実現でなく、自己を無条件に承認してくれる存在を求めるようになる。社会的になにかをする、しないではない評価でなく、「何何であるから、何何でないから」という存在への無条件承認への渇望。それを「引きこもり」の動機とする。
第27回中部ペンクラブ文学賞は朝岡明美さん「カプチーノをもう一杯」(『文芸中部』〈東海市〉94号掲載作品)に決まった。表彰式は、6月15日(日)ルブラ王山にて(名古屋市千種区覚王山通)午後5時~開催予定です。また、第27回中部ペンクラブ文学賞特別賞に竹中 忍小説集Ⅰ Ⅱ巻「春愁」、Ⅲ巻「青銅鏡(かがみ)」(風媒社刊)に。《あいちウェブ文学館》
4月18日発売された村上春樹さん(65)の短編小説集「女のいない男たち」(文芸春秋)の収録作「イエスタデイ」で、文芸春秋1月号掲載時にあったビートルズ「イエスタデイ」の替え歌の歌詞を、単行本化に際し大幅に削除していたことがわかった。 同作は、収録作6編のうちの1編。冒頭に、関西弁で改作した「イエスタデイ」の歌詞19行があったが、単行本では「昨日は/あしたのおとといで/おとといのあしたや」だけになった。また、関西弁で歌う登場人物が「誰にも迷惑はかけてへん」などと語る会話に、「著作権も侵害してないし」との文言を加えた。
村上さんは同書の「まえがき」で、該当部分を「僕の創作」とした上で、「(「イエスタデイ」の)著作権代理人から『示唆的要望』を受けた。(中略)歌詞を大幅に削り、問題が起きないようにできるだけ工夫した」などと説明した。
(読売新聞2014年04月18日)
村上春樹『女のいない男たち』30万部
【「今度の日曜日に」堀井清】
会話を括弧にせずに、シナリオのように表現しながら、運びの巧い文体で、読みやすい。まるで大人向けのライトノベルのようだ。家庭の出来事を会話の形で描くのだが、同居していても、会話があってもそのつながりは危うい。独居していた主人公の父親は、ちょっと訪問に間をあけていたら、死んでいるのがみつかる。死ぬ時にそばにだれもいないと孤独死という。文体は軽やかであるが、親子、夫婦の関係の在り方、死生感と、中味は重い。ライトノベルにも重いテーマがある。独自の文体の習熟を生かして、意欲的な表現法で、技術がそれに伴っている。なるほどこのような書き方もあるかと、興味深く読んだ。
【「神島行き」佐藤和恵】
三島由紀夫の「潮騒」の舞台となった神島を散策した話で、短歌をはさみながら、観光をする。三島はすでに文学的な象徴になっていることを感じさせる。楽しめる散文である。
~~潮騒に神風混じるこの島にMISIMAの濡れた足取りを追う~~(いいね)
~まろやかな石の鼻づら唐獅子は初枝と新治の恋を嗅ぎとる~~(いいね)
~~灯台へ監的哨へと通ゐし青年MISHIMAの海の肉体~~(いいね)
「潮騒」は、ギリシャ人作家ロンゴスの「ダフニスとクロエ」の日本版。それより先にフランスでコレットがブルターニュを舞台に「青い麦」を書いている。文学散歩のなかで、作者が二度神島にきていると書いている。見事に日本流に作り上げた特別な意気込みが感じられるのは、やはり熱を入れていたのだな、とわかったりする。短歌も文学性の香りがして良いが、終わりも方も洒落ていて楽しい。
発行所=愛知県東海市加木屋町泡池11‐318、三田村方。文芸中部の会。
紹介者「詩人回廊」編集人・伊藤昭一
東京新聞に「ゴミ情報の海から 宝石を見つけ出す 津田 大介 著」に土佐有明氏の書評が出ている。文芸情報のみを選んでいるうちに、自分も媒体別の情報の特徴がわかってくる。ネットで多いのが、ネガティブツイッターであろう。根拠のない誹謗中傷が飛び交う。その合間を縫って、辞書替わりに検索すると、それぞれの分野に知見のふかい論考や啓蒙情報があって、素晴らしいと思うことも多いものだ。津田氏もネットで登場した文化人という印象が強い。ネットの社会的意義はわかるが、出版情報を超えた文芸作品となると、まだまだ未知数のような気がする。
【「代役」杵淵賢次】
主人公の神門守次は、ある日、公安からの連絡で、自分と同姓同名の警察官がオーム真理教の関連宗教団体アレフの団体に入って、潜入調査をしていることを知らされる。そこで、アレフの関係にそれがわかって、同名の主人公が狙われる恐れがあるという。神門はかつて那須の別荘の工事人にアレフ関係者が入り込んでいたことで、公安と接触があったらしい。そこから公安検察の捜査に巻き込まれる。
実際の事件とフィクションをからませているが、内容はフクションである。公安とアレフの潜伏活動の応酬が陰で行われている出来事に関係させられた市民。作者の目の付けどころが面白い。現代社会の表と裏の、不可解で曖昧な不気味な部分をなぞるような話になっている。
現代人は、社会のどこかに見えないものが意図的に隠されているのではないか?という疑惑に取りつかれているというか、思いたがる傾向に見合った題材である。
【「ジャスミンの鉢―S町コーヒー店・第16回(最終回)」坂本順子】
行きつけのコーヒーショップに客として入って、そこで他の客やマスターとの会話や様子を観察。その人たちの人生模様や生活態度を描くという設定で、16回も連作して最終回まで書き切った。安定した力量で、最初の企画段階ですでに成功を約束されたようなものであったかも知れない。
NHKのテレビでも、これに設定が似たようなドラマ「珈琲店の人々」というのをやっているようだ。製作者は、3カ月や半年は、面倒な新企画を考えないで済むようなものを持ちたいと思うのであろう。制約のある設定はその点でかえってやり易さがある。脚本家の交代も利く。そういうものに対応できるような企画物を同人雑誌で読むとは思わなかったので、特筆した。
〒286-0201千葉県富里市日吉台5-34-2、小川方。なんじゃもんじゃの会。
《今号で取り上げられた作品》
盛岡久元「つけぶみ」(「姫路文学」127号、兵庫県姫路市)/朝岡明美「カプチーノをもう一杯」(「文芸中部」94号、愛知県東海市)/川村道行「ここが世界の中心」(「AMAZON」462号、兵庫県尼崎市)/錺雅代「庚申様の松」(「半月」2号、山口県大島郡)/神盛敬一「森の小道で」(「港の灯」6号、神戸市北区)/菅原治子「「可奈子さん」」(「婦人文芸」94号、東京都品川区)/野中麻世「紙人形」(同上)/平井文子「風の中の熾火」(「まくた」282号、横浜市戸塚区)/曽口十土「クピドに噛まれる」(「mon」3号、大阪市阿倍野区)/谷本好美「節季に来たくずれ遍路」(「風土」13号、高知県南国市)/広瀬弘章「月と自転車」(同上)/根場至「アルプス書房」(「私人」79号、東京都新宿区)/堀田明日香「大いなる正午」(「じゅん文学」78号、名古屋市緑区)/勢隆二「封鎖海峡」(「さんが」3号、神戸市西区)/興津喜四郎「樟の木」(「丁卯」34号、埼玉県桶川市)/小堀文一「「大塩平八郎」私記」(同上)/木戸順子「贈り物」(「弦」94号、名古屋市守山区)/向山タエ子「母の家出」(「文ノ楽」14号、青森県青森市)/笹田隆志「良一の提灯」(同上)/後藤克之「モッテコーイ」(「九州文学」547号、福岡県中間市)/善積健司「ベランダの向こうへ」(「あるかいど」51号、大阪市阿倍野区)/田中美代子「明けの雪」(同上)/刺賀秀子「妹よ」(「小説家」139号、千葉県佐倉市)/とうやまりょうこ「多生」(「孤帆」22号、横浜市西区)/松本あかね「沼の上に立つ家」(「ignea」4号、大阪府三島郡)/木下恵美子「惑いの果て」(「詩と眞實」773号、熊本市南区)/富岡秀雄「鼓動」(「作家」81号、愛知県稲沢氏)/大野光生「ホッといたしましたネ」(「飃」94号、山口県宇部市)
●ベスト3
勝又氏:1.朝岡明美「カプチーノをもう一杯」(「文芸中部」)・2.盛岡久元「つけぶみ」(「姫路文学」)・3.川村道行「ここが世界の中心」(「AMAZON」)
伊藤氏:1.朝岡明美「カプチーノをもう一杯」(「文芸中部」)・同点2.神盛敬一「森の小道で」(「港の灯」)と盛岡久元「つけぶみ」(「姫路文学」)・番外4.向山タエ子「母の家出」(「文ノ楽」)
●「文學界」推薦作:奥田寿子「女ともだち」(「あるかいど)・夏当紀子「しゃぼん玉みたいに」(「飢餓祭」)
((「文芸同人誌案内」掲示板・ひわきさんまとめより)
《対象作品》 「ずいひつ 遍路宿」より金子玲子「心の宿遍路宿ありて」・斉藤久代「二百号おめでとうございます」・高木白
「脈79号 特集 吉本隆明と沖縄」より吉田純「伊豆の土肥海岸にて奥さんと」「谷中の路地で思索中」・比嘉加津夫「吉本隆明にとっての沖縄」
小野田潮「一枚のレコード」(「同時代」35)
山本玲子「石狩の牧場のバタークッキー」(いわての文芸誌「天気図」12)、北原政典「花と月」(「詩と真実」776号)、大原正義「雲、流れる」(「日曜作家」5号)、しん・りゅうう「蛾と、金魚と、」(「山形文学」103)
((「文芸同人誌案内」掲示板・ひわきさんまとめより)
戦争放棄を定めた憲法9条をノーベル平和賞に推そうと市民団体がインターネットなどで呼び掛け、趣旨に賛同した大学教授らがノーベル賞委員会(ノルウェー)に推薦状を送ったところ、候補として受理したとの連絡があったことが11日、市民団体への取材で分かった。
市民団体「憲法9条にノーベル平和賞を」実行委員会(相模原市)によると、ノーベル賞委員会から9日夜に受理を知らせるメールが届いたという。
実行委は神奈川県座間市の主婦がインターネットで呼び掛け、共感が広がって発足。平和賞は個人や団体に贈られるため受賞者は「日本国民」とした。今年のノーベル平和賞は10月10日に発表される。候補者名は公表されないが、ノーベル賞委員会は候補者として過去最多の278団体・個人の推薦を受けたことを明らかにしている。〔11日、共同〕
戦争をする準備より、戦争をしないための準備の方が先。安倍首相の話を聞いていると、阿部首相は米国に帰化したらいいよ。または、法律改正より日本がアメリカの州になってしまったらすべて実現する。ただし、この世紀で一番戦争をやってきたのが米国。アメリカと日本の区別ができるものは、憲法9条だけというのは皮肉。
地域性の特化した「町田市・文芸交流会」活動=外狩雅巳の報告によると、同好者がかなりいるようだ。ただ。それぞれ個性があるので、どこまで同調者が出てくるかであろう。タコツボ化した同人雑誌から出てきてもらうには、どんな話題に共通した興味があるかをさぐる必要がある。
販売ルートと著者と出版社の利害の一致点をまとめたのが「かんき出版」のホームページ。フリーペーパーの要素を取り込み、著者の映像で書籍を紹介する「かんき出版チャンネル」ほか、毎月1書店を紹介する「あなたの街の本屋さん」を掲載。そのほか「著者インタビュー」や主要書店の経営者16人から「かんき出版に寄せる言葉」も。冊子は店に置けるが、この場合は、読みにきてもらうかであろう。ニュース性の加味は欠かせないのではないか。
優れた短編小説に与えられる第40回川端康成文学賞(川端康成記念会主催)は9日、戌井(いぬい)昭人さん(42)の「すっぽん心中」(「新潮」平成25年1月号)に決まった。戌井氏は1997年に牛嶋みさをらとともにパフォーマンス集団「鉄割アルバトロスケット」を旗揚げし、脚本も書く。2008年に「新潮」に発表した『鮒のためいき』で小説家デビュー。2009年に小説『まずいスープ』で第141回芥川龍之介賞および第31回野間文芸新人賞の候補になる。2011年に『ぴんぞろ』で第145回の芥川龍之介賞候補、2012年に『ひっ』で第147回の芥川龍之介賞候補、2013年に『すっぽん心中』で第149回芥川龍之介賞候補、第40回川端康成文学賞受賞。
~~
昔、下北沢の本田劇場に演劇を観にいったことがある。若さと勢いだけとういう感じだったが、落ち着いてきたらしい。結局、純文学って本業の片手間やるのが主流になってきているようだ。~~とことで現在、Win8・1で書いているが、仕組みが慣れないので、とにかく疲れる。頑張らないのが自分の得意技だが、こんなに疲れることをする必要があるのか疑問~~。
ノーベル賞作家の大江健三郎さん(79)が選考する第8回大江健三郎賞(講談社主催)は6日までに、岩城けいさん(43)の「さようなら、オレンジ」(筑摩書房)に決まった。同賞は今回で最後となる。
岩城さんは1971年大阪市生まれ、オーストラリア在住。オーストラリアを舞台に異邦人として暮らす人々の孤独と再生を描いた同作で昨年太宰治賞を受け、芥川賞候補になったほか、8日発表の本屋大賞候補にも選ばれている。大江さんは選評で「私がいま新しい(若い)書き手たちに示したいと思う規範を、次つぎに達成している」と評価した
≪対象作品≫川上弘美さん(55)の「水声」(「文学界」2013年1月号~)/絲山秋子さん(47)の「離陸」(2012年1月号~)/「徘徊(はいかい)タクシー」(新潮)を発表した坂口恭平さん(35)は、総工費0円の家に暮らす路上生活者を追った『TOKYO 0円ハウス 0円生活』などの著書で知られる建築家だ。/ドイツ在住の詩人、四元康祐さん(54)の「カエルの聖母」(文学界)/漫画家、小林エリカさん(36)の「マダム・キュリーと朝食を」(すばる)/「美術手帖」4月号の最果タヒさん(27)の「きみはPOP」(文化部 待田晋哉)。
神話的な愛の輝き 闇が深いからこそ、まばゆい
詩人回廊の「情報化社会の思想と主体 」山川豊太郎は、そのなかで、わかりやすく説明してくれている。
『周知の通り、冷戦の終結は、マルクス主義を奉じる共産主義国家の敗退/アメリカを盟主とする民主主義陣営の勝利――という単純な構図を意味しない。なぜなら、民主主義もまた、思想界的には一つのイデオロギー=「大きな物語」の亜種に過ぎないからである(ちなみに、民主主義をも相対化する理念として、ポストコロニアルの論者が頻用する「多文化主義」という価値観もまた、一種の「大きな物語」であるとも言える)。』
我々が生活について問題意識を持つ時に、それに社会の制度や時代の空気がどれほど関係しているかを知ろうとする。その視点を広げると、個人の世界観というものが浮き彫りにされる。
「大きな物語」思想におけるとは、時代の「形態」「様式」「流行」「習慣」などであり、文学作品がそれをどう反映しているかを観察する基準にもなる。
今月から町田・文芸交流会の組織的発足を正式に行いました。経過と入会案内を掲載します。
①仲間が集まり喫茶店などでの談話を継続的に一年間行ってきました。最初は文学街集会や文芸思潮での仲間の表彰に同行する行動でした。昨年は各人の加入同人会や個人雑誌等の相互作品合評も行いました。
その過程で少しずつ周囲に呼びかけ五人から十人の輪に広がりました。文芸同志会の伊藤氏や群系会員の荻野氏なども誘う事が出来ました。この流れを強化し恒常的な組織への転化を意図し実行に移しました。
②会として発足する為の要件を満たすためにまず会名を決めました。「町田・文芸交流会」にしました。代表は舘野久恵氏・事務局担当は外狩雅巳としました。月例会を行う拠点を町田公民館として会議室使用権の為団体登録をしました。申請書記入要件が満たされ認可。文学館・公民館などの施設が使えます。
試験的に3月29日に公民館和室で合評交流会を行いました。≪参照:文芸交流会(町田市)3月集会報告で活動展望を議論≫
快適な環境でした。本格的に月例会を行います。4月29日午後二時より第七会議室で初回を行います。5月29日は第六会議室で午後二時より第二回目。「文芸交流会」の名で使用します。
③四月例会は秦野氏の同人会誌「フレンド」の小野光子氏作品合評がメインです。
多くの同人会の方の参加で同人誌交流を兼ねた会合にしたいと考えました。町田市は作家文化人も多いので文芸愛好者も多いと思い図書館で調べました。詩人が集まり雑誌を出している「まちだ詩話会」等に案内状を送付しました。
文芸同志会の伊藤氏が同人誌作品について、「善意の第三者」的な視点からの考察を話すと提案してくれました。
彼の講話を二つ目の議題にするつもりです。参加各会の自己紹介も行います。個別の同人会内では感想が主なので文体や構成など時代との拮抗なども交流します。
④5月例会は「外狩雅巳の世界ガイド2014」出版本を討議する予定です。外狩作品「28歳の頃」の読み方について、北一郎評が掲載されています。同人誌作品への評論を巡って話し合う予定です。作品評論付単行本を発行します。
⑤ 伊藤昭一氏が直木賞作家で詩人の伊藤桂一氏の門下性仲間で、カルチャー文章教室の講師をしている作家・穂高健一氏との連携の提案もしてくれています。≪参照:穂高健一ワールド≫
6月末の三回目頃には具体化を予定中。町田ペンクラブとも連絡してみます。
文芸同人誌の会合では雑誌発行と掲載作品の合評で活動が目いっぱいでした。外部交流などが進みませんでした。
町田文学館・市役所などでも多角的な視野での文芸活動の団体は無いので未知の分野との事でした。展開には興味をしめしてくれました、行政補助・提携も視野に入れて期待感で接してくれました。
見学参加予定者には資料を無料送付します。希望者は御連絡下さい。見学参加してみて思うところを述べ、討論してみませんか。皆様の出版本も合評したいと思います。著書をお持ちの方は連絡してください。私たちの同人雑誌サークルというのは、通常は、会員個人出版本は合評対象外です。著書を読んで論評して欲しい方々の希望をかなえるような集いにもしたいと思います。
「町田・文芸交流会」事務局担当・外狩雅巳=連絡所〒252-0235相模市中央区相生2-6-15、外狩方。
【「カンナの恋・続編」眉山葉子】
雑誌の名前は忘れても、個性のある書き手は記憶に残るもので、「カンナの恋」という小説は強い印象があって、その続きがあるのか、と思い読んだ。中年女性のカンナの恋心と気分が闊達な筆運びで、表現され退屈させることがない。理屈を超えた心の華やぎで読者を楽しませる。
【「歳月はその輪郭を……」西野小枝子】
かつて恋人だった男を奪われた主人公の諒子が、策略をもってその男の妻となった奈津と再会する。諒子の恨み心どうしてそうなったかの説明と、その過程がみっちり描かれる。じつは男は奈津と結婚してから間もなく亡くなる。奈津はほかにも同様のことをしていたらしく、今は後悔している。諒子に300万円の慰謝料を払って、その後をボランティアで活動をしているのを諒子は見る。こうあらすじを書くと、なるほどと思うが、作者はなんでもてんこ盛りで、奉仕精神などのテーマ性のある問題意識を複数盛り込むので、読んでいる最中はどうなるのやら見当もつかない思いがした。
【「老いの日々」山脇真紀】
93歳になるは母親が亡くなるまで、実の娘が介護し大往生を遂げるまでを描く。この作品には短い章ごとに小見出しがついている。中味の伝えたいという気持ちが良く出ている。味わいの深いものになっている。
私自身、所属の同人誌に寄稿することになり、埋め草で過去の作品を加筆してみたが、どうもただの事務的な文章で文学性がない。ただ、それには現在でも読んでほしい社会的な意見が反映されているので、内容ごとに小見出しを入れることにした。編集者は、経済記事みたいですね、といったが、それで通してもらったばかり。同じ工夫をしているという意味で、この作品が一番印象に残った。
発行所=〒547-0015大阪市平野区長吉長原西4-7-24、西野方。マストの会。
紹介者「詩人回廊」北一郎。
西尾維新です。物語シリーズ最新刊『終物語(下)』が、いよいよ満を持しての発売の運びとなりましたので、ご挨拶させていただきます。物語シリーズ初の三分冊となった『終物語』ですが、作者が危惧していた四分冊五分冊になることなく、無事に三分冊で書き終えられたことが、そして無事にお届けできることが、とても嬉しいです。『ひたぎクラブ』を書いたのは今からおよそ十年前で、振り返ってみると感無量です。下巻かつ、シリーズのしめくくり的な一冊でもあるので、さすがにここから読んでも大丈夫とは言いにくいですが、100パーセント趣味で書かれた小説を、とは言えあまり感傷的にならずに、お好きなように楽しんでいただければ。
そう言えば今月発売の小説現代増刊メフィストに、『人類最強の初恋』なる長編小説を書下ろしています。久々の思いついたから書いちゃった系ですが、よろしければあわせてどうぞ。(西尾維新)(講談社『BOOK倶楽部メール』 2014年4月1日号より)
地球の上の日本丸に乗り組んでいる自分は、いったいどこにいるのか、また日本丸はどこに向かっているのか? そのような疑問が生まれるとしたら、それは日々の生活が、見えざる時代の流れを感じとることから始めなければならない。
我々は、社会が発信する情報のゲリラ豪雨のなかにいる。情報化時代に関する評論は、沢山ある。それらが特別に否定し合うことはないようだ。それだけ解釈多様化が起きているということであろう。詩人回廊の「情報化社会の思想と主体 (一)山川豊太郎」は、そのなかで、わかりやすく説明してくれている。
このなかで、「大塚英志が『「彼女」たちの連合赤軍』で詳述しているように、かつて「理想の時代」に終止符を打った連合赤軍の兵士たちと、麻原彰晃のもとで違法活動に手を染めた信者たちとの共通点は多い。」この世界は何かの要素を振りまきながら、時間のなかに存在するのではないか、そして我々はそうした抽象的な空気に影響されるということが認識できる。
題「夫婦の物語」
藤代成美さん「居間に降る雪」(「照葉樹」2期、5号、福岡市)、佐藤文男さん「旅立ちの日」(「火山地帯」177号、鹿児島県鹿屋市)
第7期「九州文学」25号(福岡県鹿屋市)より吉村滋さん「惜別」・暮安翠さん「三足の草鞋」・葉山こうさん「ハウス珠美」、野見山潔子さん「消えた川」(「火山地帯」)
((「文芸同人誌案内」掲示板・ひわきさんまとめより)
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